「……バカでも風邪は引くのねえ……」
「あのー……そんなはっきり言われると銀さん傷つくんですけど。」
体温計に記されたのは、38.5℃の文字。
薫は一つ溜息を吐いて、銀時の額に冷えた手ぬぐいを置いた。
「薬買ってくるから、大人しく寝てなさいよ。」
「薬なんて新八に頼んで、薫は銀さんの看病に専念した方がいいと思うな、うん。何かあったら大変だしね。銀さんこんな弱りきった身体じゃ何にも出来ないから!」
「何も無いでしょ、どうせ。ここ殆ど毎日暇じゃない。」
「こんな時に限って何か大変なことがあるんだよ!万が一を考えたら銀さん怖くて寝れないから!」
銀時の意見をスルーし、万事屋を出ようとする薫。
それを阻止しようと、銀時は必死になって薫を引っ張った。
「あーっもう!寝てろって言ってるでしょ!」
「無理!弱ったときは人肌が恋しくなるものなの!」
「じゃあ新八君か神楽ちゃんにそばにいてもらえばいいしゃない!」
「それじゃ意味なーい!俺は#name2#にいて欲しいの!」
ずるずると引きずられながら、銀時は叫ぶ。
しかし、薫も譲らなかった。
「それはどうもありがとう!だけど放して!」
「やだね!」
「いい加減にしなさいよ!」
薫は銀時をずるりずるりと引きずって、遂に玄関まで辿り着いた。
「このままだと、あなたを砂利道でも引きずって行く事になるわよ!」
「嫌!」
「じゃあ放してよ。」
「無理。」
「……」
薫は盛大に溜息を吐いて、銀時を思い切り蹴飛ばした。
「うっ……!」
銀時の低い呻き声を聞いたと思うと、薫は一瞬揺るんだ銀時の腕からさっと逃れた。
「病人に向かってけりを入れるたぁ……そんな非道な真似、薫にしか出来ねーな。」
蹴られた箇所を摩りながら、銀時はまた一つ呻く。
「大人しくしてなさいって私の言うこと聴かないから痛い目見るのよ。」
薫は下駄を履きながら、そっと微笑んだ。
「すぐ、帰ってくるから。」
「……寄り道すんなよ。」
「しないって。」
「……さっさと帰って来ねーと、後で承知しねえからな。」
「はいはい。」
薫は呆れた様に笑って、出掛けて行った。
「行って来ます。」
そんな彼女を見送って、銀時は頭を掻きながら布団に戻った。
熱があると言うのに、あそこまで騒いでいれば当然なのだが、今にも頭がかち割れてしまいそうだ。
「……さて、言われた通りに大人しく寝てますか。」
そして、帰って来たら思いっ切り甘えてやる。
薫はどんな顔をするだろうか。
考えるだけで、頬は緩んだ。
あなたがこいしい、
くるおしいほど
いとおしい
― 例え病気じゃなくたって、
それは変わらないのだけれど、―
二人の関係が何なのかはご想像にお任せ〜( ・∀・)/
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