貴方の世界に私はいない (1/1)





貴方が見つめる先に私はいない。

「そうだ桑折、この間ルキアがよ、」

身振り手振りを交えて話す貴方の顔は、すごくすごく楽しそうで。
私の大好きな真っ赤な髪が揺れて。
貴方につられて私も笑顔で。
でも、心がちくりと痛むのは、貴方の気持ちが私にはないと分かっている、から。

ルキアさん、て人に会ったことはなかった。
貴方の話に何度も何度も出てくる人だから、自然と名前は覚えた。
彼女ですかって、ちょっと前にカマかけたことがあって、そのときは冗談じゃねーって強く否定してたけど、その後幼馴染みなんだって答えた貴方が、すごく愛しそうな表情をするから。
私には二人の間に割り込む隙間はないんだと、悟らされた。

戦いの中に見せる頼もしい背中とか、大きな手とか、意外と甘党なこととか、不器用だけど優しいとことか。
こんなにも好きでいるのに。
伝わらない、伝えられない。
もどかしくて一人で泣いて過ごす夜は、会ったこともないその人のことが必ず頭によぎって、そう、顔も知らない人に、私は随分嫉妬してるんだ。





貴方の世界に私はいない
ねえどうしたら私を見てくれるの




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