逆光 (1/1)




手に入れるために、色んなものを手放して来た。

自然と離れてくものもあった。

自分から捨て置いたものもあった。



だけどそうやって大切なものに背を向けて、結局のところ、俺は何を手に入れたんだろう。

追い求め過ぎて、何が欲しかったのかさえ分からなくなっていく。

空を仰いでも海を眺めても、答えは見つからない。

ただ一つだけ、この手で守ると誓ったものも、少しずつ少しずつ、遠くなっていく気さえする。



この世の全ては狂っている。

なら、そんな世界。

俺がこの手でぶち壊してしまおうと。

守るための掌を、拳に変えたんだ。





「お前を守る」と

いつか言ったその言葉は

嘘なんかじゃなかった



ただ知らないうちに

俺は俺の手で

お前を傷付けていたんだ







逆 光 







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