つまりは全部夢だった (1/1)







血が流れる。
痛ぇ、

「さあ、立つ……だ、朽……キア。」

薄れてく意識の中を、反逆者たちの声が支配していく。

声も出ない、
刀を握る力も、少しずつ遠ざかってゆく。
体が鉛のように重い。
立つことはおろか、指一本動かすことすら出来ない。

「に、様……!」

ルキアの声が聴こえる。
そうだ、俺はあいつを護れなかったんだ。

「ああ、済……ない、時……だ。」

そんな声が聞こえた。
俺はゆっくりと目を開ける。

霞む視界に、妙に鮮明に映ったのは、光に包まれたあいつだった。

隔てられた世界。
天に空いた穴。
それに吸い込まれてく、愛しいひと。

ご め ん ね


あいつの唇が、そう動いた気がした。



嘘だ、ウソだ、うそだ。
冗談だと笑ってくれ。

俺とおまえは、いちばん近くにいたじゃないか。
どうして離れてく?

あんなにも愛を誓い合ったのに。
あんなにも互いを確かめ合ったのに。
そうだ、俺たちは結ばれていたはずだろう?

俺は一度意識を失って。
次に目覚めた俺の隣に、やっぱりお前のぬくもりはなかった。






つまりはぜんぶ夢だった
(愛は嘘だと、いつかのお前が呟いた言葉の意味を、
俺はこのとき知らされたんだ)







ずっと離さないと
誓ったお前の右手。
俺が握っていれば
繋がったままだと信じてた。

知らないうちにお前は
俺の左手を振りほどいて
もう戻れないところへ
向かってたんだ。




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