GOOD NIGHT BLACK (1/1)
「井上を助けに行く」と、そう言った一護の目は真っ直ぐな色をしていた。
――嫉妬した。
今も命の危機に晒され、たった独りで敵地に攫われた織姫の身を案じるより早く。
一護に思われる織姫が羨ましいと、思ってしまった。
(これはきっと一護をおびき寄せるための罠だよ。)
(だから止めよう、助けに行くの。)
一護に嫌われたくないから、その言葉は飲み込んだ。
「本当は行かないで欲しい」と心が叫んでいる。
私はそれに無理矢理蓋をしながら、助けに行くと言った一護に向かって、「私も行く」と、そう言ったのは無意識に近い。
来るなと言われても頑として首を縦に振らなかったのは、偽善と意地。
私は、なんて醜いんだろう。
きっと一護には、私のこんな醜い部分は見え透いている。
だから貴方は、私を選ぶことはない。
もしも虚圏に連れ去られたのが、織姫ではなく私だったら。
一護は迷わず助けに来てくれただろうか。
もしも私が、無垢で純粋な心の持ち主だったら。
貴方は振り向いてくれただろうか。
――もしも。
もしも私が、この世界から消えたなら。
貴方は泣いて、悲しんでくれるだろうか。
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