好き嫌い


「なんで卵焼きに納豆が入ってんだ」
「美味しいですよ? これならネバネバしないから直ぐに食べられますよ?」
 私の言葉に剣八さんは眉間に皺を寄せて食卓に並んだ卵焼きを睨んでいた。剣八さんに睨まれている卵焼きには、剣八さんが言う通り納豆が入っている。その卵焼きを箸で切り、箸で持ち上げて左手を添え、剣八さんの口元へと近付ける。
「はい、剣八さん。あーん?」
 しかし、剣八さんの口は堅く閉じ、開こうとはしなかった。
「美味しいのに……」
 私はそれを自分の口に放り込み、咀嚼する。普段はやちるちゃんの要望で甘めに作る卵焼きだが、今日は納豆に合うように少し塩っけのある卵焼きにした。
「ピーマン食わすぞ。今日の晩飯はピーマンの肉詰めだ。俺が作ってやる」
「それはご遠慮します……」
 想像しただけでもあの苦さが口に広がり、剣八さんのように眉間に皺が寄った。
「剣ちゃんも優ちゃんも好き嫌いはダメだよ」
 大人気ない私達の攻防を見ていたやちるちゃんは痛い一言を放った。その正論に私達は全く反論が出来なかった





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