宛名の無い手紙



「まあ」
 俺の机の上を整理してくれている優紫の背中をソファに寝転がって眺めていると隊首室に感嘆の声が響いた。
「こんなにお手紙を書いて下さったんですね」
 優紫が何の事を言っているのか見当が付かず、重い腰を上げて優紫の後ろから机を覗き込んだ。優紫の手には一枚の紙が握られている。そこには俺が退屈凌ぎに落書きをした優紫への愛の言葉とも言えない「好き」だとか「愛してる」、「会いたい」だとか単語がある。
「あっ」
 ガキみたいで恥ずかしくなった俺は急いでその紙を引ったくる。
「折角だから頂こうとかと思ったのに」
「捨てる」
「私への想いを捨てないで下さい」
 そんな事を言われてしまったら、引ったくった紙をまた優紫の手へ渡すしか無かった。優紫は嬉しそうにそれを受け取り、「お返事を書いてもいいですか?」なんて何処か浮かれていた。





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