雑記。Twitterで呟いたり呟かなかったりしたネタとかもある。
※デフォルト名まま/あらゆるネタバレを考慮していない脳直

掌中小話 

期間限定イベント『ワンジナ・ワールドツアー! 〜大精霊と巡る世界一周〜』のフリクエネタ。
名前変換なし。カルデア時空。



 ――聖杯?なんでも願いが叶うって?へぇぇ、胡散臭い僕でも胡散臭く感じるね、そいつは。まぁ物は試しだ、使ってみたら?大丈夫そうなら使うから、僕も。

「……って答えたらしいな? セイバー」

 静まり返った夜の管制室で、千尋は斎藤に言った。
 常に目まぐるしく変動する画面に体を向けつつも、横目にそのサーヴァントを捉える。空席に深く腰を下ろしてくつろぐ斎藤は、おどけるように笑ってみせた。

「ああ、なに? マスターちゃんに聞いたのか」
「うん。まあ、半ば愚痴だったけど。“実験台にしようとしてる……!?”って」
「ははは。あながち間違いでもねぇな」
「ハッ」
「なによ、その小馬鹿にしたような笑い方は」

 すっかり可愛げがなくなって……と溜息をつく斎藤。千尋は、「自分のマスターを実験台にするような真似できる性分じゃないだろ」という信頼を胸の内に秘めたまま、改めて問うた。

「聖杯にかける望み、何かないのか?」
「……そういう千尋くんは?」
「は?」
「あ、うん。すまん。分かってる分かってる。聞くまでもなかったわ」

 弱体状態〔恐怖〕を付与できそうなほどの声音に、斎藤は両手を胸の辺りまで挙げる。無論、言うまでもなく千尋の聖杯にかける望みは『セイバーの再召喚』である。セイバー(完全な同一霊基ではない)テメェが聞くな、という訳だ。

「僕はー……うーん、そうねぇ。世界中の麺類を食べたいね」

 千尋は口をあんぐり開けて、顔を斎藤の方に向けた。

「……僕、そんな妙な事言ってる?」
「…………いや? ……カルデアで叶いそうな願いだなと思って」
「ああ、あの赤いアーチャー……エミヤとか言ったっけ? 確かにリクエストすりゃなんでも作ってくれそうだけどね。まあまあ、こういうのはさ、現地に言って楽しむもんなんじゃないの? まっ、僕は生憎と日ノ本から出たことはないけどね」

 ギュッ、と眉根を寄せる千尋に、斎藤は首を傾げる。「何か言いたげじゃない?」と問い詰めようと身を乗り出したところで、管制室の扉が開き、大欠伸と共にロマニが入ってきた。

「ふわあ〜、お疲れちひろぉ……って、うわっ!? セイバーじゃないか! びっくりしたあ」

 胸の辺りを押さえ、体を縮こませるロマニに千尋は思わず笑った。

「ははっ、俺の呼び方移ってら。少しは眠れたか?」
「うん、まあ……まあまあ眠れたかな。うん。千尋も休んだら?」
「あー、うーん……いや。俺はもう少し起きてるよ。ダストンに引き継ぎしたら休むかな」
「そうかい? ……いざとなれば村正を呼べばいいか」
「やめろ」

 軽快に交わされる会話に、すっかり斎藤は蚊帳の外である。
 十数年カルデアで共に過ごし、互いにそれなりの立場で、今を生きる人間同士。そりゃそうなる、と理解こそすれ、納得はし難い。なんか面白くないと頬杖をついた斎藤だが、仕事の邪魔をする訳にはいかないかと立ち上がった。……ロマニが斎藤が座っていた席に座りたそうに視線を送っていたというのもある。

「そんじゃま、千尋の話し相手も戻ってきたし、僕は出て行くとしますかね」
「おー」

 管制室から出て行く斎藤に、千尋はひらりと手を振る。
 扉が閉まり、ロマニが腰を落ち着けた頃、千尋は両手を握り締めて机に叩きつけた。

「うわびっくりした。なに? 村正呼ぶ?」
「呼ぶな! あの……セイバー野郎!」
「セイバー野郎……?」
「聞けよロマン!」
「聞かされてるよ」
「セイバーの奴、聖杯にかける望みはなにかって聞いたら、“世界中の麺類を食べたいね”だと! ……くそ」

 千尋の言わんとするところを察し、ロマニは相槌を打った。
 2004年の聖杯戦争における千尋の願いは『斎条家からの解放』のち、世界を旅することだ。そしてセイバーはそんな千尋に付き合うために受肉を望んだ。……結果は、千尋がカルデアに所属していることが答えでもある。

 あの時、聖杯戦争で勝っていれば。――聖杯なんかに願わなくたって。

「彼を責められる事でもないと思うよ? 同一人物の別人なんだし」
「ンなこと分かってる……だからお前に話してんだろうが」
「そうだね。ついでに言うなら、かなり無理のあるたらればじゃないかなあ。他陣営のサーヴァント的にも……」
「お前……お前! 俺がもう少しお前のこと好きじゃなかったら顔面に行ってたぞ! 言葉には気をつけろ⁉」
「え? ああ、ごめんって。この辺りはぼやかしてた方がよかっ」
「よし殴る。顔貸せ」
「なんで⁉ キミの拳は痛いからイヤだよ!」