晴天


※ハーミット


雨があがった。
雨宿りの為に居た、小さな休憩所。
綺麗な虹が掛かる空を貴方の隣で見ていた。 草木は水を獲て、歓喜の声を上げている。
開いたばかりの若葉は楽しそうに揺れている。
草木の笑い声、綺麗な歌声と、あなたの温もり。
とても安らかで酷く美しくて、儚い。
今にも消えてしまいそうなこの風景と温もりにずっと浸っていたいなあ、なんて。
「綺麗に晴れたねぇ」
そう言うと貴方は空をじいっと見つめて
「そうだな、虹もかかっている」
って、言うの。
「虹の向こう側って、気になるよねぇ」
って、私が言えば
「ならば行ってみるか?」 って、私のお願いを叶えようとしてくれる。
「ううん、ここでいい。」
貴方の隣でゆったり見つめているのが一番だから。
「そうか。」
「うん」
本音は言わずに、隠しておく。
うつらうつらと揺れる彼の頭を肩に置いて微笑んであげる。
「よく眠れてないんでしょう?」
とか言えば彼は観念したように目を閉じる。
「おやすみなさい、サンダルフォン。」
頭を撫でてあげれば彼は「君には敵わないな。」と皮肉混じりに笑われた。
それでもいいよ、ずっと笑っていられるこの幸せがあるなら。
ふと見た水溜まりに反射して、彼の姿が浮かぶ。 反射のせいか、角度の問題かどうかはわからないけど私の姿は、水面に近い足以外、映ってなかった。 変な水溜まりだなあ。って、ちょっとの間、見つめていました。