僕らはずっと夢を見てる


冷たい空間で爽やかな風が流れている。
相対する少女は黒の婚礼衣装に身を包み、脱色してしまった銀糸と蕩けた紅玉でサンダルフォンを見つめている。
いつかの青年を侮辱した研究者と似通った配色と夕焼けを表す紅に吐き気を催す。
そんなサンダルフォンとは真逆の思考の少女 ヨーコはぼんやりと目の前の風景を見ていた。 あの日と同じだと、ゆっくり考える。学校の屋上から見た夕焼けと、あの時は小さな画面に収まっていた彼は目の前で存在している。

まぎれもない現実だ。

ヨーコは一歩一歩と歩み寄り、サンダルフォンへ手を伸ばす
「サンダルフォン……」
か細く、寂しさを多分に含んだ声にサンダルフォンは体を強張らせる。
「サンダルフォン、私と一緒になろうよ」
先程まで蕩けていた瞳が虚ろになる。
「やめろ、特異点‥‥来るな!」
ふらふらと近付くヨーコにサンダルフォンは一歩ずつ引いていく 「なんで‥‥?どうして、逃げるの?」
悲しそうな瞳と光を移さぬ声が少しずつサンダルフォンを追い詰めていく。
「私は貴方の為に、世界を滅ぼすのに……どうして止めるの?」
「空を滅ぼすのは君の本来の目的ではないだろう」
サンダルフォンは努めて冷静に返す。
「じゃあ私が本気かどうか、そこで見ていればいい」
冷えた瞳を向けられた後、背を向けられる。あの目は本気だとどこかでわかっていた。

────だから手をかけた。

その首を切り裂いた。
覆らない運命に嘆いたりなどしても無駄だ。そう感じたからこそ、彼女の首をあの人と同じように掻き抱いた。