逢瀬


「おはよう、あなた。」
腰まで伸びた長髪と女性らしく柔らかに成長した身体を包む婚礼衣装。白の花が咲いているブローチは美しく、玉髄の瞳はサンダルフォンを写している。髪をかきあげる左手の薬指に輝く結婚指輪は傷一つ付いていなかった
「……ヨーコ?」
記憶に残る名前を呼べば彼女は微笑み部屋に備え付けてあるテーブルに置かれた珈琲カップをサンダルフォンに手渡した
「今日は深煎りにしてみたの。朝早くから頑張ったのよ?」
我儘な人ねと笑うヒト。
でも何故だか目が離せないほどに惹かれる女性。
「……どうしたの?まるで記憶がないみたい、な」
首を傾げベッドの傍に椅子を置き、座ると心配そうな目で見つめられている。
「サンダルフォン、そんな顔してどうしたの。」
冷たい手を額につけられ彼女の手を払う。
「…………気が良くない?じゃあ、寝直してもいいんじゃないかな。
……まだ6時だし今日くらい寝ても許されるよ。」
微笑みを浮かべて珈琲を奪われる。起き上がらせていた上半身を寝かされ目元に手をかざされる。
「おやすみなさい、良い夢を」