純愛のチョコレート


「サンちゃんいる?」
黒のフレームに縁取られた眼鏡をかけてアルケミストの服を着たヨーコが食堂を訪れた。大声に反応して奥から顔を覗かせたサンダルフォンに満面の笑みを浮かべてヨーコは近付く。
「騒がしい、大声で呼ぶな。」
いつものように冷たく見下ろされるが蕩けた顔でサンダルフォンを見上げるヨーコが背に隠していた箱を取り出した。
「いつも守ってくれてありがとうサンダルフォン、これはほんの少しだけの気持ち。」
食堂にいる女性陣(主にコルワ)が息を呑む。ヨーコを見下ろしたままサンダルフォンは差し出された箱をつまみ上げて乱暴に振った。箱に当たる固形の音が聞こえる。
「ふぅん……?」
「中身はチョコレートなの、サンダルフォンが好きかどうかわからないけど結構甘さは控えめに───」
ぱくり。開け放たれた箱に入っていたチョコレートを口に含んで咀嚼し、嚥下する。
「…………甘過ぎる。こんなものよく食べれるな。」
「えっ、あ…………ご、ごめん…………。」
冷たい物言いに食堂にいる一部の過激な団員が愛用の武器を手にしたが、次の瞬間、それは治まる。
「まだあるのだろう、食べてやる。珈琲を淹れるから待ってろ。……奥の席が空いていたはずだ。」
そう言ってヨーコの頬に口付けを落とし奥へ消えていったサンダルフォンの耳はとても赤い。
「は、はひ……まってる……。」
その場で崩れ落ち、頭を振って照れるヨーコ。奥にいたルシオがいつもよりにやけながらサンダルフォンをいじる。
「意外に積極的なんですね。」
「煩い。静かにさせるのはあれが一番いいだけだ。」
真っ赤に頬を染めて反論する説得力のないサンダルフォンにルシオはまた口角を上げた。