踏み台を抱えて、蝋の翼で
2024/02/01
どこにいても、
ずっと浮いているように感じます。
席はあるのに、
私が座っている場所ではない。
名前はあるのに、
私が呼ばれているわけではない、
コードネームのようなそんな名前。
扉越しに、
誰だか知らない人を呼んでいる。
鏡の向こうから、
別の世界の誰かが呼んでいる。
そんな気持ちになります。
コードネームのような名前とは。
この世界と焦点が合わないのです。
私はたしかに目を持っていて、
しかと前を見ているはずなのに、
何とも誰ともどこともピントが合いません。
自分のどこかを踏み台にして
合わせにいっているような、
そんな日々を感じます。
座り心地のない席とは。
みんな、とよく言う人たちの話すことが、
基準として当たり前のように持っている価値観が、
理解できないのです。
そう言うと、
そんなあなたでもいいよ、
と受け入れるという姿勢をみせてきます。
気遣いはありがたいのですが、
それがそもそも
私と相容れない価値観だということに
気づいていません。
受け入れる。
本当にそうするというのなら。
それをできるというのなら。
私はこの世界に溶け込めます。
私がこの世界を現実だと
未だ確信が持てないように、
この世界も、
私を、
この世界のものと
認識していないかもしれない。
ずっと、
幻を見ているような気持ちなのです。
ずっと、
夢で他の世界に落とされたような
そんな気分なのです。
今
このガラスのコップから
手を放したら、
目が覚めるだろうか。
今
この壁を蹴ったら、
骨は折れるのだろうか。
今
このままどこまでも
顔を上げなかったら、
溺れるのだろうか。
そんなことを常々思っては、
何を考えてた?と問われます。
言えるでしょうか。
こんなことを。
やれるでしょうか。
こんなことを。
これでも一応、
この世界で生きるには
人と共に在る必要があると
わかっています。
根もなく浮いていても、
それなりに
この世界に美しさを感じます。
だから、
触れないでほしいのです。
私の心に。
踏み台を抱えてうろうろと、
世界と並ぼうとしている私の心を、
のぞこうとしないでほしいのです。
私は、
あなたと手を繋いでみたい。
この世界を、
人を、
あなたを、
美しく思っているから。
藁さえも掴みどころがわからず、
蜘蛛の糸の探し方もわからない。
それでも、
蝋の翼を持って
あなたの所に飛んでいってみたい。
どこまでなら保てるのか、
慎重に少しずつ飛んでいきますから、
だから、
私をのぞこうとしないでほしいのです。
私を、暴いてしまわないで。
きっと、
あなたの指先に
触れてみる日がくるから。
かき氷のような所在なさを指先に感じたら、
どうか、私を見て、笑って。
その一瞬、
私はきっと、踏み台を手放せるから。
だからどうか。
私の心を、
のぞこうとしないでほしいのです。
暴かないで。
どうか。
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