pine


「あ、やっと起きた。おはよ」
「…はよ?」
「あはは、なにがなんだかわかんないって顔してるね」
「????」
「起きれる?手貸そうか?」
「いや…いいワ……」


目を開けると、見覚えのある懐かしい顔が俺を覗きこんでいた。

幼馴染のこいつは、いたずらがすきでよく俺たちとつるんでいた。
よく笑うやつだった。

「あはは!けぇちゃん、すごい顔してるよ」
「人の顔面に文句つけんな!俺は元からこういう顔してンだよ」
「顔っていうか、表情!にしてもかっこよくなったよねぇ。絶対モテモテでしょ?」
「ハ!?知るか、ンなこと」
「も〜!照れちゃってさ〜」


ペヤングをやるっつってもいつも断るようなやつだった。
マイキーからのたい焼きはもらっていたクセに。


「けぇちゃんさ〜、まじでペヤングばっか食べるのやめな?食事バランスって知ってる?」
「仕方ねぇだろ。ペヤング美味ぇんだからよ」
「美味しいのもわかるけどね?野菜もちゃんと食べな?」
「中に入ってんだろ」
「もしかしてペヤングの中に入っている小さいキャベツ、野菜認定してる?やめときな?あんなのパセリと同等だよ?」
「キャベツはキャベツだろ」
「圧倒的に摂取量不足だって」


よくみんなで集まりたがって、マイキーと俺が喧嘩したときは仲直りさせるのがいつの間にかこいつの役割になっていた。

「マイキーとも、仲良くしないとダメだよ?」
「…うるせぇ」
「ま、他にいっぱい友だちもいるみたいだし、その人たちがなんとかしてくれるか。みんなと仲良くしてね」


怪我をした鳥の世話を子どもなりにして、手当も虚しく死んだときは干からびるんじゃないかとおもうぐらい、一日中泣いていた。
誰かのために泣くようなやつだった。


「あと喧嘩多すぎ!怪我多すぎ!」
「かすり傷ばっかだろうが気にすんな」
「けぇちゃんのかすり傷って世間でいうそこそこの怪我だからね?」
「セケン様が弱すぎんだろ」
「けぇちゃんの喧嘩の数が多いだけだから!」
「うるせ〜。仕方ねぇだろ」


「全く…。あと安全運転ね!バイクいいけど、交通事故起こさないでね」
「へーへー」
「ちゃんと約束してって!」
「お前と違ってドジ踏まねぇわ。安心しろや」
「あんなスピード出して怖くないのか不思議〜」
「お前も乗ればわかるワ。今度乗せてやる」
「!うん、今度乗せてね。約束」
「おう。約束な」



ア?

俺、なんでこいつのこと後ろに乗せてねぇんだっけ。

最近の思い出のなかに、なんでこいつがいねぇんだっけ。





思い出した。
幼馴染のこいつは、確か下校中トラックが突っ込んできて、それで

「なあ、おま「けぇちゃんさ」


「…ンだよ、いま俺が話そうとしてただろ」


途中で話を遮られて不服な気持ちを隠すことなくぶつけても、こいつはそのまま言葉を続けた。




「けぇちゃんはさ、
まだこっち来ちゃだめだよ」





そういった幼馴染のあいつは俺の肩を押して、俺は押し返す間もなく後ろに落ちていった。
俺の方が力は強かったはずなのに。
荷物を持つと歩くのが遅いから俺がいっつも、荷物持ってってやってたのに。


ああ、そうか
俺があいつと同じ場所にいけるわけねぇよな
死んだ後ぐらい一緒にいれると勝手に思ってたワ
あいつが笑った顔、もっと見とけばよかった
もっと話せばよかった
お前に話せてないことがいっぱいあったのに














「ッ先生!意識戻りました!」

目を開けると、白い天井が見えた。しかも明るくね?
ジゴクって結構白いんだな。勝手に黒いんかと思ってたわ。


「場地さん!聞こえますか!場地さん!」


ンだよ、うっせーなぁ
見りゃわかんだろうが
しかも、ジゴクってサン付けすんのかよ
ウケるな
あいつにも教えてやらねぇと
ジゴクでサン付けなら向こうは様付けか?
ご立派だな


喉が気持ち悪いぐらい乾いてンのに
涙ってでるんだな
あいつ知ってるかな
泣き虫って馬鹿にしたことあったけど、俺も人のこと言えねぇわ



バイク乗る約束、どうすんだよ
約束は破るなってオフクロに言われてんだよ
お前のせいで約束破る男になっちまう
責任取れよ







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