祓魔塾始動−2


簡単な挨拶や連絡だけでホームルームは終わり、早めの放課後がやって来た。授業は週明けからで、各科目の必要なものリストに従って買っておくよう言われている。教科書はすでに寮に届けられていた。
しかしすでに、朝祇たちの鞄には教科書が何冊か入っている。それらも事前に届いていたものだが、間違っても文科省が検閲したものではない。

今日から始まる、祓魔塾の教科書だ。
発行は正十字騎士團日本支部で、塾生だけに配られている。
何冊か入った鞄を持って、朝祇と廉造はさっさと教室を出てエントランスへ向かった。


「おっ、坊たちもう来てはる」


朝祇より背が高い廉造が、人混みの先に勝呂たちを見つけた。待ち合わせしていたエントランスには、すでに勝呂と子猫丸がいるようだ。


「ぼーん、お待たせしました〜」

「そう待っとらん。行くで」


待ったときは正直に「遅い」と言うやつだ、本当に待っていないのだろう。4人で長いエスカレーターを降りる。ガラス張りの壁面に高い吹き抜けの天井、二組のエスカレーターの間にある幅の広い階段はレッドカーペットが敷かれている。生徒たちの話し声が反響する広大な空間には、まだ慣れない。

そこから少し歩き、人目につかない適当な扉に着いた。周りに人がいないことを確認し、勝呂がポケットから鍵を取り出す。教科書とともに寮に届いていたもので、これを使えばどの扉からでも塾に行ける。
代表して勝呂が開くと、そこは扉の外見とはまったく違うバロックのような様式の空間になっていた。

カラフルな床や壁、色ガラスが嵌められた扉、高い天井。しかし、窓はない。地下だろうか。
おそるおそるその空間に入り、扉を閉める。


「1106号室だっけ、集合場所」

「確かそうやったと思うで〜」


目の前の扉に1123、右の部屋に1124とあるため、朝祇は左を見る。


「多分こっちだな」

「不親切な造りやな、案内板とかないんか」


勝呂は軽く舌打ちをした。実際、この長い空間ではどこがどこだか分からない。子猫丸は苦笑して「まぁまぁ、伏見稲荷かて鳥居に案内板あらしまへんですやろ」と宥めた。ちょっと違うような気がした。

少し歩くと、目的の部屋に辿り着く。カラフルな扉を開くと、中にはまだ誰もいなかった。


「一番乗りですや〜ん…って汚い部屋やな!」


廉造は誰もいないのを良いことに思いきり汚いと評した。朝祇含め、特に異論はない。
何となく、右側後方に向かう。4人とも、中学時代に教室の窓際後方に固まって勉強したいたからだろうか。
1つの机に2人が座れるようになっていて、前に子猫丸と勝呂、後ろに朝祇と廉造が座った。


「やっぱ隣の席いうんもええなぁ」

「おい志摩、授業中イチャついたら絞めるで」

「ちょ、なんで俺だけに言いはりますのん!?朝祇には言わんのです!?」

「一ノ瀬がんなことするわけないやろ」

「1人でイチャつけませんけど!?」

「やかまし」

「理不尽!」


コントのように掛け合うテンポの良さに思わず笑えば、廉造は「朝祇〜」と泣きついてきた。情けない声を出してんじゃねえと言ってやっても良かったが、とりあえず宥めておく。

そうやって騒ぐのも、教室に他の生徒が入ってくるにつれて止めた。入ってきたのは、目が細く人形を左手に嵌めた男子、長い髪をお下げにした女子と髪の短い女子の2人組、グレーのパーカーを目深に被った恐らく男子だ。
普通そうなのは髪の短い女子くらいで、他は一癖二癖ありそうだ。


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