Contemporary III: make us one
−そしてまた新たな時代へ
アルレシアは走っていた。
急いで、謝るために。
今さら、もう何もかも遅いかもしれないが。
直接会って話したかった。
70年に渡って願ってきたことが、叶うのだ。
アルレシアは人の目も気にせず、ひたすら走った。
***
王宮から見つかった勅令は、世界を大いに驚かせた。
戦後、ずっと国交を断絶し、ヨーロッパの課題となり続けた2か国の関係が動き出すかもしれないのだ。
各国のトップニュースとなったが、アルレシアはそんなことより大事なことがあった。
ドイツ本人に会うこと。
嫌い、と言われたことが胸に残るが、それも関係ない。
ただひたすら、会って謝りたかった。
森を抜け、大きなドイツの家に着く。
アルレシアはぶつかるようにチャイムを鳴らした。
「誰だ…っ!」
「…ドイツ」
扉を開けて出てきたのは、驚いた表情のドイツ。
実際に目の前に立つと、何を喋ればいいのか分からなくなる。
言いたいこと、伝えたいことがたくさんあった。
「…ニュースは見た」
「…、」
「…アルレシア、もう一度、仲良くしてくれないか」
はっきりと言ったドイツに、アルレシアはばっと顔を上げた。
「この前はすまなかった。…本心ではない、と言って信じてもらえるか分からないが…アルレシアが俺のことを嫌いになったら楽だろう、と考えてあんなことを言って、」
ドイツが話終わる前に、アルレシアはドイツに飛び付いた。
「―――ごめん、ごめんな、ドイツ…!」
謝りながら、温もりに涙腺が緩む。
「…アルレシアが悪いんじゃない」
ドイツはアルレシアの背中に手を回す。
昔より、小さくなった感じがした。
泣いて欲しくない、本能でそう思う。
「俺、ドイツのこと傷つけた」
「最初に傷つけたのは俺だ。約束を破ったのも…だから、おあいこだ」
ふ、と笑って、ドイツはアルレシアを抱き締める。
「もう…触れるんだな」
「おう…どんどん触れよ」
「なに人の弟誑してんだよ」
新たな声が、ドイツの後ろからかかる。
ドイツから離れて後ろを見ると、口調のわりに穏やかな表情のプロイセン。
「プロイセン…」
「俺様が恋しくなったか」
ニヤリと笑う顔も、あまりニヒルではない。
「…すごくな」
そう言ってアルレシアはプロイセンにも抱き着いた。
難なく受けとめ、プロイセンはぎゅっと抱き締める。
「謝るなよ」
アルレシアの耳元で囁くと、「言われなくても」と軽口を叩かれる。
だがその声は涙声だ。
「冷戦のとき、心配した」
「お前の内戦だって心配だったぜ」
プロイセンはアルレシアの髪を梳くように撫でる。
「ドイツー!」
するとそこへ、外からイタリアの声が響いた。
「お、俺らのキューピッドちゃん」
「どこにナンパ失敗するキューピッドがいるんだ」
アルレシアは目元を拭ってプロイセンから離れ、イタリアを視界に納めた。
「アルレシア兄ちゃん!?」
イタリアはアルレシアを見てひどく驚く。
「もう会えたんだ!」
「あぁ、イタリアのおかげでな」
「…、ドイツも知ってたのか?イタリアの夢の話」
「イタリアから聞いた。まさか本当にこうなるとはな」
「なんだよ、目的まで聞いてたのか」
「あっ、そっか、俺アルレシア兄ちゃんになんで王宮の地下捜索するのか言わなかったや」
「…なんでそんな大事なことを言わないんだイタリア!」
「ヴェー」
「ヴェスト上官モード抜けねえな」
プロイセンが笑い、アルレシアもおかしくなって口許を緩める。
「ったく…久々に話すってのに、そんな感じしねえじゃん」
「悪い、つい」
「ヴェ、嬉しいな、二人が話せるようになってー」
「今回はイタリアがファインプレーだったな」
アルレシアはイタリアの肩をぽすぽすと叩く。
「えへへー。よーし、じゃあアルレシア兄ちゃんさっそくEU入ろうよ!それでお金ください」
「イタリア!」
「それは俺の利益があるかどうかだな?」
アルレシアは手で金のマークを作る。
それを見て、3人とも顔を見合せ苦笑した。
***
アメリカ、ニューヨーク。
とある高層ビルに、様々な国たちが集まる。
定期的に開かれる、世界会議である。
だいたい踊って終わる、建設的のけの字もない会議だ。
アルレシアはそんな会議だからというわけではないが、単純に飛行機の遅れで到着が遅れていた。
まあいいか、とは思っている。
ビルに入り、エレベーターを上がる。
目的の階に着いた途端に、騒がしい声が廊下に漏れているのが聞こえた。
イギリスとフランスの口論、アメリカのでかい声、中国の謎の主張、ロシアの不気味な笑い、イタリアのパスタコール、そして―――
「お前ら静かにしろ!!」
アルレシアは苦笑して取っ手に手をかける。
「怒られっかな」
静まり返った会場の扉を、ゆっくり開く。
「悪い、遅れた」
一歩、世界の中へと踏み出す。
その一歩から、また新たな時代へと、進んでいく。
FIN.