それも甘え
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包容デンマーク×機嫌悪い夢主
コペンハーゲン中心部、ストロイエ。
若者の街として大規模な商業地域であり、街の中心的位置付けだ。
アルレシアは仕事でコペンハーゲンに来ており、デンマークに先程呼び出された。
そうしてストロイエの一角で待っているわけだが。
「…遅い」
アルレシアはマフラーの中で口元だけ動かす。
真冬の、しかも朝の街。
空は晴れているが、前日の雪が大量に積もり、路面は凍結し、空気は刺すような冷たさである。
ここ最近ずっと心にわだかまるもやもやが増幅されている気がした。
正体不明のこのもやもやのお陰で、よくイギリスの引き攣った顔を見るようになった。
爽やかな、世界一幸せな国の首都。
海がわりと近くにあり、港から喧騒が街に伝染して来ているような朝。
今日は休日で、人はまばら。
そんな中で、一人寒空の下待ちぼうけを喰らう。
朝っぱらから呼び出しておきながらこの仕打ち、どうしてくれよう。
悶々と考えていると、雪を踏みならす音が近付いて来た。
「わり、俺が遅れっちまった!」
「ほんとだよ」
「わりいわりい!」
デンマークは寒さを感じさせない快活な笑みを浮かべる。
「朝っぱらからアルレシアと会えるなんて幸せだな!」
裏表のない言葉が、ストレートにアルレシアの心に入った。
こういうのは慣れている、というより、周りにこんなのばっかりなため気にしないのだが、今日は心臓が変な音を立てた。
「…朝っぱら恥ずかしいやつだなお前は」
そっぽを向いて言うと、「はい天使」と抜かしている。
「おっさんがおっさんを天使呼ばわりとか」
「俺もおめぇもまだお兄さんだっぺ!」
それに、と続ける。
「俺にとっちゃ、昔っからアルレシアが一番かっこよくて、かわいくて、綺麗だ」
また直球な言葉。
後半二つが気に入らないが、謎のもやもやが溜まりそれを溢れないように外から蓋がされた心に刺さるようだった。
その蓋に突き刺さり、亀裂を入れる。
そこからは、もやもやが溢れ出して来る。