それも甘え
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「…なんだよ、呼び出した理由。携帯でもパソコンでもやり取りできる時代にもなって。ろくなことじゃなきゃ殴る」
「え、会いたかったからじゃ駄目なのけ?」
「え、それがまかり通ると思ったのかよ」
アルレシアは冷たく横目で見た。
「ちっ…そんな理由で朝から待たされるなんてな」
あ、これは駄目かもしれない、とぼんやり思った。
思考するのは頭のどこかで、口から出る言葉を選別する機能に著しい欠陥が生じている。
「昔から勝手で人のこと考えないで大物ぶって。いちいち言動が煩わしいし、自分中心だと思ってる馬鹿で、騒がしくするだけして役に立たないで、」
つらつらと言葉は出て来る。
簡単に出る言葉になど、いったいどれほどの本心があるというのか。
本心を簡単に口に出せるわけがあろうか。
心にもないこと言って傷付けて、ぼんやりそれをどこかで認識して黙認して。
最低じゃないか。
イギリスにもそういう態度だったのかもしれない。
誰が何か悪いわけじゃないのに。
そんなことをする自分が嫌で、それでも止まらない罵倒が出て来る自分が汚らわしく思える。
止まらない、止まらない。
なんでなのか分からない、分からないからさらに嫌だ。
ぐるぐるとわずかな思考を行う細胞が混乱をきたし、感情が心の蓋の隙間から漏れだした。
「こりゃ、きちぃな。けんど、アルレシアが一番つらかったな」
デンマークは一言そう言って、手袋を外してアルレシアの頬を撫でた。
アルレシアはようやくそこで自分が泣いていたのに気付く。
「最近、嫌なことあったべ?そういうのが重なって、許容オーバーで、機嫌悪かったんだっぺ」
頬を撫でた手はそのまま髪をすく。
「俺は鈍感だし、すぐ忘れっからよ、ちょっとやそっとじゃ傷付かねぇし…全部許す!」
笑ってデンマークはアルレシアを抱きしめた。
「好きなやつならなおさらな!」
こいつの家の寒さなのに、こいつの腕の中は暖かい。
温もりは急速に心の蓋を溶かし、中のもやもや―――苛立ちを消し去る。
「…ありがと、ごめんな」
デンマークの腕の中で、ようやく、笑えた気がした。