勝てない親分
−1
親分支配下時代
スペイン×夢主
スペインは中央での仕事を終え、深夜過ぎに屋敷へ帰っていた。
一般人には危険極まりない時間でも、国であり最盛期であるスペインには関係がない。
だが確かに疲れているし、眠い。
最重要な夕飯すらまともに食べられず、もう元気がなかった。
「みんな寝とるやろうなぁ」
屋敷にいるだろう子分たちを思い、少し表情が和らぐ。
丘の坂道を上り、屋敷の屋根が見えて来る。
途中の果樹園の様子を見ながら歩みを進め、ふと、屋敷の一角に明かりが灯っているのが見えた。
ろうそくは一定時間に消すことになっている。消し忘れだろうか。
とりあえず屋敷に入り、泥棒の可能性を考え一応警戒はする。
どうやら明かりがついていたのはキッチンのようだ。
慎重に、半開きになって隙間から光が漏れる扉へ近付く。
ゆっくりそれを開くと、美味しそうな匂いとともに、アルレシアの姿が視界に入った。
「へ…?」
「おう、お帰り」
振り返ったアルレシアの手には鍋の取っ手。
鍋には熱々のオジャが用意されている。
「なんで…」
「使用人に帰って来る時間聞いたんだ。夕飯食えなさそうっていうのもな」
それで用意してくれていたらしい。
ようやく事態を理解したスペインは、口元が緩んでいくのを感じた。
「めっちゃ嬉しいわ」
「ん。今皿に入れるから」
皿に移し替え、銀のスプーンを添える。
「ダイニングはロマーノの部屋近いから、起こさないようにここで我慢な」
キッチンの中、机についてアルレシアが作ってくれたオジャを口に含む。
「うまっ!いつの間に作れるようになったん?」
「前からスペインの家の料理練習してたんだ。お前の負担減らそうと思って。一応、(仮)とはいえ子分だし?」
いたずらっぽく笑うアルレシアに心臓が高鳴った。
「俺、アルレシアに勝てる気せん…」
「100年早い」
「そんなことないで!100年なら…」
結局、400年以上経った現代も敵わないのは、先の話。