好きなもの
−1
夢主総受け気味
ちょっとお下品なので注意!
「今日集まってもらったのは他でもない、議題がないことについてなんだぞ!」
アメリカのその言葉で、世界会議は初っ端から凍りついた。
***
定期的に開かれる世界会議。
毎度ながらアメリカに集まるわけだが、今日はそのアメリカから冒頭のトンデモ発言が飛び出した。
いつも突拍子もないことを言うアメリカだが、輪をかけて衝撃的だ。
「おいアメリカ!なんでそんなんで会議開いたんだよ!」
「僕も暇じゃないんだけどなー、アメリカ君またキューバ危機する?」
さっそくイギリスが的確に突っ込み、ロシアはコルコルする。
「議題ないなら我は帰るある!宇宙の進出に忙しいある」
「イギリスとロシアは置いといて中国!宇宙は俺のものなんだぞ!」
「アメリカ君は喧嘩売ってるんだね?ロシア価格で買うよ。あ、宇宙は僕の」
「俺には町工場だけで宇宙進出した日本がついてるんだぞ!」
「え、いや私はいくつかの宇宙関連部品で世界シェア100%なので誰かの味方では…」
「議題ないのに会議踊るのな。逆に器用」
アルレシアは結局いつも通り騒ぐ国たちを見てため息をつく。
「議題ないもん会議とは言わへん」
隣のオランダは不機嫌そうだ。
その精悍な顔立ちの眉間には苛立ちを示す皺が寄る。
「だから眉間にシワ寄せんなって何度言ったら…」
例によってアルレシアはオランダの眉間をぐりぐりとする。
よく眉間にシワが寄るやつら(オランダ、ドイツ、スイス、イギリス)には見掛けるとやっている。
オランダは真顔ながらシワを解き、長年の付き合いにしか分からない期限のいい雰囲気を醸し出した。
ちなみに、隣のデンマークの隣に座るノルウェーもシワを寄せるが、アルレシアが目の前に立つと瞬時に消える。
消える前にノルウェーのシワをぐりぐりとして伸ばすのが密かな目標だ。
そのノルウェーとデンマークは、アルレシアに眉間を弄られるオランダを見遣る。
「またされてんのけ!」
面白そうなデンマークと、面白くなさそうなノルウェー。
「わざとやってんでねえか」
オランダはノルウェーの言葉に睨みつける。
「お前みたいのがおるさけシワが寄るんじゃ」
バチバチと火花が散るが、アルレシアはノルウェーのシワが寄った眉間に集中する。
(デンマークに隠れて見えにくい今なら…!)
これは千載一遇のチャンスだ。
ぎりぎりまで隠れるためデンマークにくっつき様子を伺う。
デンマークはぽんぽんと頭を撫で来るが、今は反応していられない。そして、ノルウェーの意識がオランダに向いている間に、気配を消して飛び出した。
「うお、」
「っよし!」
驚いたようなノルウェーと、ガッツポーズを決めるアルレシア。
しん、と静まる周り。
「…何やってるんだい、そこの北海組」
アメリカに言われ、アルレシアは自分が思わずはしゃいだところを見られたことに気付く。
途端に羞恥が沸き上がり、顔を赤くしたアルレシアはオランダに隠れた。
オランダは、顔を赤らめ可愛い姿になっている(オランダ的には常にだが)アルレシアを隠したいので何も言わず抱きしめてやる。
「さいあく…」
「かわええー…」
恍惚としたスペインの声にオランダは睨もうとしたが、あまりにスペインがR指定な顔をしているため目を逸らした。
「…なした?」
ノルウェーは今だ状況が掴めないようで、一部始終を見ていなかった他の国も尚更だ。
「いや…あの…眉間を、その、シワをだな、広げるのがこう…趣味?というか…癖?だから…」
オランダから離れ目を泳がせながら言うアルレシア。
ノルウェーはなんだかどうでも良くなってテイクアウトしたい気分になる。
中身がR指定である。
「ええなぁ、お持ち帰りしたいわぁ…」
スペインは中身もR指定だった。まことに潔い。
「俺アルレシアのそんな嬉しそうなとこ初めて見たぞ!」
アメリカが喜々として言うと、フランスが鼻で笑う。
「お兄さんあるー。赤字覚悟で取引したらああいう顔されたもーん」
「それカモにされただけある。妄想は控えるよろし」
「眉間にシワ寄せて伸ばせたらテンション上がるんだろう?俺もやるんだぞ!」
アメリカは眉間にシワを寄せる。
「いや、ノルウェーは俺が前に立つとシワなくなるからチャレンジ精神があった。お前のそれはただのシワだ」
それを聞いてイギリスは噴き出した。
「ぶっはは!言われてやんの!」
「うるさいぞ!君なんてその眉毛じゃ眉間の範囲が広すぎて伸ばしようがないじゃないか!」
「なんだとこら!」
また騒ぎになるかと思われたが、そこへ新たな声が上がる。
「ヴェー、じゃあ他に何がアルレシア兄ちゃんは嬉しいのかな?」
イタリアの発言に、一同押し黙る。
各々思い当たるものを探すが、全員見当たらなかった。
「よし!じゃあ今日の議題はアルレシアが何に喜ぶかだ!」
「なんかデジャヴ」
アルレシアは前に経験したような流れに目が遠くなった。世界会議に参加するようになったのが最近だからだろう、やたら絡まれるのだ。
「まずは本人に聞くんだぞ!」
「それ答えじゃないか…?」
諌めるタイミングを失ったドイツは投げやりにアメリカへ言葉をかける。
もうこうなった世界会議はどうにもならない。
「まともな返事返って来ないと思ってね」
「失礼だろ」
アルレシアはアメリカを一度睨む。
「じゃあなんだい?」
「………………金?」
「すまないアメリカ」
「分かってくれればいいんだドイツ」
あんまりな返答にドイツは顔が引き攣る。
昔からの守銭奴気質に変わりはない。
「外貨だとなおいいな。なぁ?アメリカ」
「えっ」
突然微笑むアルレシアに、アメリカの顔もひくついた。
曲がりなりにも好きなものだからか、その笑みはどこか妖艶だ。
「俺(外貨)好きなんだよ。だからさ…もっと(貿易)しようぜ…?」
「っ!ななななな何言ってるんだい!?こんなとこで!」
「おいどういうことだよ!い、いつの間にそんなっ!」
「お兄さんというものがありながら!」
血は争えないのか、揃って勘違いするアメリカ・イギリスと、分かっているがまぜっ返すフランス。
「破廉恥あるー!こんなとこで×××の話すんなある!」
「あああ中国さん頭隠して尻隠さずですよ…!」
「尻!?日本まで何言い出すあるか!××あるか!」
「え!?××なんてそんな、×××ならたくさんありますが…」
「そんな兄貴の××××は××××なんだぜー!」
こちらも血は争えない東アジアであった。
「なぁアルレ、親分と(×××)するー?なぁするー?」
「(貿易?)別にい「アルレシアそれ罠だぞちくしょー!」え、」
スペインの意図に気付いたロマーノが慌てて遮るとスペインは口を尖らせて拗ねる。油断も隙もない。
「いい加減にしろお前ら!!」
とうとうドイツが怒鳴ると、ぴたりと騒ぎは収まる。
「アルレシアが喜ぶものの話だろう!」
「んー、まぁドイツ、いいよ」
アルレシアはドイツを見、ついで全体を見渡す。
「みんなで仲良く騒いでんのが、一番嬉しいし楽しいよ」
少し照れながらも満面の笑みで言うアルレシアに、全員が『会議は踊ってよし(※アルレシアがいる場合に限る)』と脳にインプットしたのだった。