眠れぬ夜
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二回目のオランダ領になった夜
「なぁ…」
「なんや」
「ほんとに一緒に寝んのかよ」
「なんぼ言わせたら気済むんや」
寝室だと紹介された部屋はオランダの部屋で、オランダいわく"二人の"寝室だそうだ。
ベッドは確かにでかい。
だが男二人、しかも片方は1700歳を越している爺だ。
いい歳して何やってんだ、という心境である。
「もう寝るで」
「はぁ…分かった」
急遽、今日買った枕だけ置き、二人でベッドに入る。
狭くはないが、まず隣に人がいる違和感、そして掛け布団内部が外気に晒され寒いということが判明した。
「寒いんだけど」
「こっち寄りねま」
寒さ>恥という式が成り立ち、アルレシアはオランダの方に寄る。
「わ、オランダの側あったけ」
「そうなんか」
「どっちかっていうと体温低いだろお前…結構冷えたのかも」
普段低体温のオランダがかなり暖かく感じるため、アルレシアは割と寒さで体温が下がっていたことに気付く。
「無理は禁物やざ。戦争終わった直後なんやから」
「分かってる」
「せやから抱きしめたる」
「もっかい戦争するか?」
不吉な動きを見せたオランダの腕を叩き、アルレシアは寝返りを打って反対を向いた。
「つれへんやっちゃな」
「変態」
悪態をついて、アルレシアは目を閉じる。
そのうち、オランダからも寝息が聞こえて来た。
このまま夜が更けるだろうと、思っていた。
***
(なんで寝れないんだよ…!)
何時間か経ち、すっかり夜も深くなった。
窓から見える星の位置からして、夜明けまで二時間くらいの時刻だ。
(環境変わると、慣れるまで全然寝れない癖治んねえかな…)
これはアルレシアの癖で、環境が変わると寝付けなくなる。
慣れるのに時間はかからないが、まったく寝れないこともあるため、厄介ではあった。
(どうしたもんか…)
いくつかある対処法も、オランダが一緒のベッドにいる限りできない。
せめて暖かいガウンでも持って来れたらいいのだが、オランダは神経質らしく、抜け出したら起きるらしい(昼間それを理由に夜中に逃げ出すのを牽制された)。
戦争を終えたばかりのオランダの休みを奪いたくはない。
ふと、先程の温もりを思い出す。
(…オランダ、ちょうど良さそうな体温だったな)
熱すぎず低すぎず、心地好い体温。
この時間ならかなりぐっすり寝ているだろうし、バレないはず。
アルレシアはゆっくり慎重に、オランダに近付く。
そして、アルレシアに向けて半端に出された腕に頭を乗せ、逞しい胸板にそっと額をつける。
鼓動の音が温もりとともに伝わる。
(こんなに安心すんのか、心音って…)
以前スペインにやったやつだ。
自分がされた経験はなかったが、今自分からされに行ったことになる。
ちょうどいい温もりと、とくとくと脈打つ鼓動。
すぐに、瞼が落ちていく。
「…もっと…早く、誰かにこうして欲しかった」
知らず、声に出してから、意識を手放した。
「…おやすみ」
微笑んで、オランダはつむじにキスを落とす。
早い段階で目を覚まし、もぞもぞするアルレシアの様子を伺っていたら、自分から寄ってきた。
内心悶えていたが、最後の言葉に胸が締め付けられる。
スペインが言っていた通り、孤独が嫌いなんだろう。
こうして今も孤独だった頃の悲しみを背負っているのだから。
一度、自らがそれを強いてしまったことを、再び悔いる。
「いつでもしたる…絶対に」
しっかりアルレシアを抱きしめて、オランダも目を閉じた。