※ヒロインの扱いが雑でヒドい
※おまけに下品




 始めにイルミから「悪いことは言わないからやめておいた方がいい。」と釘を刺された意味がようやく理解できた。

「実は、手を焼く妹がいるんだ。」

 発端は、イルミが深刻そうに呟いた一言からだった。彼が珍しく頭をかかえていたので、ただの興味本位で話題を深く掘り下げてしまったのだ。実の妹? イルミの2歳下? もしかしなくても、その子は手練れなのかい? しかし自分で言い出しておきながらも、彼の返事は芳しくはなかった。
 それは一体何故か? イルミがそこまで存在を隠したがるのには大層なわけがあるんだろう。そう焦らされると俄然会ってみたくなってしまうのが人の悲しい性だ。
 だって、玩具は多いに越したことはないじゃないか。たったそれだけで人生の彩りの深みが増すというものだ。
 その妹とやらはイルミに似ているのだろうか。彼の証言から漠然としたイメージを膨らませてみる。……もしかしたら案外美人なのかもしれない。そっちの面でも少し期待した。
「他人に紹介できるほど誇らしい人間じゃないんだけど。」
 相も変わらず渋るイルミであったが、ビジネスマネーを支払う旨を提案したところ彼の了承は恐ろしく早かった。

「本当に後悔すると思うよ?」
「くどいね、キミも。」
「割と真面目にヒソカのことを思って言ってるんだけど。」

 およそイルミらしからぬ発言だ。美学を捨ててまで大事にしたい妹なのか? それならばやはり見聞する価値はありそうだ。昔から障害が多いほど「恋」は燃えるというし。
 そんな淡々とした会話を織り交ぜつつ、指定されたバーで初めて彼女と対面した。そして話は冒頭へ至るわけだが。

「良い男に会わせてくれるって言ってたのに嘘だったの?」

 彼女はイルミにこそこそ耳打ちをしているが、まるで声を落としていなかったため残念ながら丸聞こえだった。

「ぜんっぜん好みじゃないし、つーかむしろ気持ち悪くない? 妙に変態くさいし。 ジュンジ=イトウのマンガ思い出すんだけど。 なにあの顔のペイント気持ち悪い服装もセンスない気持ち悪い道化恐怖症の人が見たらきっと発狂もんだわ。 彼、マクドナルドの出身なの? 脳内ハッピーセットなの? 排水溝から顔を覗かせるタイプなの? お兄ちゃんの思考回路ってほんと意味不明。」

 ここで判明したことが一つ。どうやら彼女は秘密主義ではないらしい。ゲロ以下の汚らしい嘘にまみれた世の中なのだ。正直とは非常に良いものだ、とこの場は好意的に解釈しておくのが賢明だろう。

「だって、ヒソカがどうしても戸愚呂に会いたいって言うから。」
「それで自分だけ懐あったかくしようってわけ? ……で、いくら貰ったのよ? 協力料として後であたしにも分けてよね。」

 彼女、恐らく変化系だろう。なんとなくそんなニオイがする。
 そして家族団欒の会話に混ざるべきか否かでやや悩んだが、素直に二人の印象を吐露してみた。

「あんまり似てないんだね、キミたち。」
「うん、まあね。 似てなくて本当に良かったよ。」

 イルミはまるで能面のように表情を変えなかったが、何となく彼の心の底からの声が聞こえたような気がした。

「戸愚呂はキルアと似てるね。 見た目だけ、だけど。」

 何気なく感想を口にしただけだったのだが、聞いた瞬間戸愚呂は雷鳴のごとく憤慨した。急に叫ばれて鼓膜が痛いし、おまけに周囲の客の目も痛い。

「はぁ!? キルアにまで会わせたの!? 本当にお兄ちゃんって有りえないんだけど!」
「いや、会わせてないしあれは不可抗力だから。」
「…………。」

 う〜ん。 やはりこの二人、よく似ている。この兄にして妹あり、といった感じだ。両者とも他人を踏みにじることを厭わないタイプなのだろう。独自のワールドができあがっている。
 彼女、潜在能力もそこそこありそうなのになぁ。性格に難ありで非常に勿体無い。しかしここで、うっかり自分の悪い癖が出てしまった。

「78点、といったところか。」

 心の内に留めたはずが、無意識に声に出てしまったらしい。
 それを聞き、見る見るうちに戸愚呂の額には青筋が浮かんだ。まぁ、そりゃあ怒るだろうね。

「あぁ!? 女の子を値踏みしてんじゃねえぞ! 真正のクソったれ0点野郎が!
 テメーの汚ねえブツ噛みちぎって鮫の餌にでもしてやろうか? それか綺麗に切り落としてテメー自身で惨めにケツ掘らせてやるよ!」
「へぇ、それは怖い。」

 確かに素材は悪くない。黙ってにっこりと微笑んでいてくれたなら中々のものだろう。それだけで“落ちる”男は幾人もいそうなものだが、彼女にはそういった知恵は働かなさそうだ。
 しかし何よりも柄が悪い。ある意味ゾクゾクくることには違いないが、いかんせん下品な変わり種は勘弁だ。何より大切な息子の危機でもあるし。
 この調子じゃあ立つものも勃たなそうだし、今回は一つ、勉強料ということで丸く話を収めておこう。
(もしも仮に息子をもぎ取られてしまったとしたら、謝礼つきで依頼すればマチは繋いでくれるだろうか? 悩ましくも、また興奮しそうなところだ。)

「ほら戸愚呂、ヒソカのジョークだから。」
「さすがにお兄ちゃんそれ適当すぎるでしょ! つーわけでヒソカ、後で屋上来いや。」
「遠慮しておくよ。」

 しかしながら、もし戸愚呂を女性としてそういった対象で見ることができる特異な男がいたとしたら是非とも会ってみたいよ。
卑下た嘘とコウノトリ
170614