※やにわに下品
「……え? ヒソカ? ヒソカってあのヒソカ?
顔に変なペイントしてて、変な服装でもてんで平気な顔して街を練り歩いてるあのヒソカ?」
「ああ、そうだ。」
何てことはない、といった響きでクロロは返事をした。恐らく大した関心も寄せていないのだろう。だが、初耳のあたしは驚きを隠せない。
事もあろうに、除念の報酬はヒソカとの決闘であるらしい。
「ヤダ、そんなの。」
「戸愚呂?」
握りしめていたクッションを床に思いきり放り投げると、そのままの勢いでクロロの脇腹に抱きついた。彼の胸板にぴたりと頬を寄せると、静かな脈の音がする。
「だってクロロ……ヒソカに掘られちゃうんでしょ?」
「……おい、気色悪いこと言うな。」
鳥肌が立つだろ、想像したくもない。
クロロは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。あ、かわいい。
「え? じゃあ逆の立場なの……? ヒソカってゲイなんでしょ? クロロの隠された性癖が開花しちゃうよ、きっと。」
「妙な想像はやめろ。 ただ純粋に戦闘をするだけだ。」
「本当に? 嘘じゃない?」
オレが今までお前に嘘をついたことがあったか? ……なんてこと言われたって、気付かない時点で嘘としては成立しねえんだよ。
つまり、嘘をつかれたことはないって信じてもいいんだよね? 一応。
あたしは当事者じゃないっていうのに、何だか気持ちがソワソワして落ち着かなくなってきた。ぎゅっ、と腕に力が込もる。
「当日はお弁当でも持って応援しに行ったほうがいい?」
「頼むから大人しくしててくれ。 オレの問題にお前を巻き込む気など更々ない。 」
「……分かった。 大人しくしてるなんて、一番苦手な分野だけど。」
……ヒソカ。ヒソカ。おえ、思い出しただけでも不愉快になる。よりによって、何でアイツなの?
いっそあたしに相談してくれたって……いや、除念の類なんて死ぬほどダルくて面倒くさそうだから絶対にあたしには無理だわ。薄情でごめーん。ヒソカありがとう、って表面上だけは感謝しといてあげるわ。
「でも、クロロってヒソカと知り合いだったんだ? 全然知らなかった。」
「以前から感じていたことだが、お前少し無知が過ぎないか。」
「うん、よく言われる。」
バカだとかマヌケだとかウスノロだとか、そういった類の罵詈雑言を浴びるのは日常茶飯事である。ただ、慣れているからといって決してムカつかないわけではないが。むしろプッツンきてしまうお年頃です。
「兄貴から何も聞かされないのか?」
「ん、何もってなに?
っていうか、もしかしてお兄ちゃんとも知り合いなの?」
と、まさかの事実に瞠目すると、クロロは呆れたようにため息を落とした。……あー。ごめんね、視野が狭くって。
「つくづく愛されてるんだな、お前。」
「は? 何で?」
どうしてそういう発想になるの? いきなり、短絡的にも程がない?
男の考え方って、やっぱりよく分からない。女と違って構造は単純なはずなのに。
いやそんなことよりも、今一番重要なのは目先のことなのだ。
「ともかく、くれぐれも背後だけは取られないようにね!」
下半身は特に注意だからね! 貞操帯みたいな甲冑でも装備しとく?
と念を押すと、ふいに背中に腕が回り柔らかくベッドに押し付けられた。視界がクロロでいっぱいになって、思わず頬が緩みそうになってしまう。
彼の手によりスカートを捲り上げられて、すーすー心許ない感覚がした。
「万が一、オレの性癖に影響があった時のためにもう一度くらいしておくか。」
「……うん。 クロロが男だったって証明は、あたしがちゃんとしてあげるからね。」
悪戯っぽくその綺麗な鼻筋に軽く噛み付くと、仕返しとばかりにがむしゃらなキスを落とされた。
羊さん、狼を召し上がれ
170714