※キルアが5、6歳の頃
「キル、お姉ちゃんにもそれやらせてくれない?」
「ゼッテーやだ。 姉ちゃんに貸したらぶっこわされるに決まってるし。」
この頃のキルアはダーツにご執心だ。何が楽しいのかはよく分からないが、キルアが熱心に取り組む姿を見ていたらあたしも何だか試してみたくなってきたのだ。
ゆえに、冒頭のように可愛らしくお願いしてみたのだが、生意気の盛りに入っている弟はあたしに向かってべーっと舌を出してきた。
正直ムカつ……少しカチンときたものの、腕っぷしに任せ幼い弟の玩具を取り上げるわけにもいかないので、姉として大人しく我慢することにした。(年の近いミルは特別枠なのだ。)
「ぶっ壊すなんて、か弱いお姉ちゃんがそんなことするはずないでしょう?」
「だって姉ちゃん怪力ババアじゃん。 “ためしの門”だって4まで開けてたし。」
「…………怪力ババア?
キル、お姉ちゃんはね、力が弱いから試しの門なんて開けたことがないのよ。」
「ウソだよ、オレちゃんとこの目で見たもん。
それに、せっかくアルカが砂場で作ってたお城も姉ちゃんがよけーなことしたせいで壊れたし。」
「……あれはね、お姉ちゃんも悪気はなかったの。 アルカのお手伝いをしようと思ったのよ? でも、砂のお城って力加減が難しいでしょう?」
「つまり、姉ちゃんがぶきような怪力ババアってことじゃん。」
キルアが再度“怪力ババア”というワードを出した瞬間、頭の中が沸騰したように熱く煮えたぎった。
―― あぁ!? あたしのどこが“怪力ババア”なんだよ。あたしは可憐で可愛らしいお嬢さんで通ってんだぞ。
―― このクソガキ、いくらあたしが優しくしてやってるからって舐めきった態度取りやがって。どうやら、いっぺん痛い目みないと分からないらしいな……!
「キルア、一度だけチャンスをあげる……。 金輪際お姉ちゃんのことを怪力ババアって言うのはやめなさい。 約束するなら今回のことは大目に見てあげるから。」
「だって姉ちゃんが怪力ババアなのは本当のことじゃん。」
「キルア……ッ!!」
三度目ともなれば、もう我慢が利くわけもない。
憤慨してキルアの首根っこを掴み、自分と同じ目の高さに吊り上げる。重力に反し小さな身体がふわりと浮上すると、キルアはにんまりと笑った。
「でも、姉ちゃんが怪力で良かったよ。 姉ちゃんと思いっきり遊ぶの楽しいし、姉ちゃんが女みたいに弱っちかったらゼッテーつまんないもん。」
「楽しい? お姉ちゃんと遊ぶの楽しいの?
……キルはお姉ちゃんのこと好き?」
「うん、オレは好きだよ!」
キルアは満面の笑顔でそう言うと、抱っこして、とあたしに手を差し出してきた。
……なんて! なんて可愛らしい子なの! 先程まで感じていた怒りはどこへ行ったのやら、この生意気にも可愛い弟をこれでもかと言うくらい愛でたくなってきた。
「キル……! お姉ちゃんもキルが大好きだよ!」
キルアを思いきり抱きしめると、「ぐぇ、姉ちゃんくるしい……」とくぐもった声をあげたが、あたしの耳にはまるで入らなかった。
まさか後々「キルを殺す気?」とお兄ちゃんにこんこんとお説教を食らうことになろうとは思わなかった。
そして「戸愚呂ってバカだから、テキトーにほめとけば怒られそうになってもラクショー」とキルアがアルカやカルトに入れ知恵を働いていたのはまた別の話である。
一番星みいつけた!
180313