クロロって本当にずるい。

 だって、カラコン要らずなくらい黒目が大きいし、睫毛は濃くて長いし、っていうか女のあたしよりよっぽど可愛い顔してるし(負けたと思うのは悔しいけど事実だし!)、髪は艶々のサラサラだし、肌はきめ細やかで綺麗だし、足がすらっと長くてスタイルがいいし、おまけに丁度いいくらいの体格だし(あたしは筋肉ダルマみたいな男って美しくないから大嫌い!)、この容姿に限ってはケチを付けるところはまず見当たらない。
 何なら、今すぐ剥製にしてウチにずっと飾っておきたいくらいだ。(そしたら毎日でも丁寧にお世話してやるのに。)

「…………。」
「…………。」

 もう、かれこれどのくらいの時が経過したか分からないが、ひたすら無言のまま、ただただクロロのことを観察してやった。(しかも真正面から堂々とだ。)
 いくら見ていても飽きないし、彼はマネキンのように無抵抗だ。だからあたしも遠慮なく眺めていられた。
 たまに瞬きするときの瞼の動き方でさえ、なんだか可愛らしい気がする。(ぱしりぱしりと睫毛の先が小刻みに震えるのだ。)
 やっぱり、クロロってばずるい……。

 しかし、この至福のひとときは永遠には続かなかった。
 何故なら、唐突にクロロの手によって身体を引き寄せられ、唇に一つキスを落とされたからだ。唇はすぐに離されたけど、あたしは少しばかり動揺を隠せないでいた。
 だって、マネキンが勝手に動くなんて話は聞いたことがなかったし。

「な、なに? 突然。」
「あまりにも熱心だったからな、求められてるのかと思って。」
「なにを? ……キスを?
 そんなこと微塵も思ってないし、一言も言ってないんですけど。」
「それは勘違いをして悪かったな。」

 そう適当な返事をしつつ、クロロはあたしの背中を意味ありげに撫で始めた。緩慢な動きで何度か大きく往復すると、今度は服の裾から手を侵入させてくる。
 彼の手は熱くて、なんだかいやらしい。背筋にぞくぞくと淡い痺れが走っていった。
 あたしがわずかに反応を示すと、クロロは目尻を細めて更に服に手をかけようとする。

「……クロロ? それはセクハラじゃない?」
「お前の欲望は叶えてやったんだ。 今度はオレの番だろう?」
「なにそれ、横暴! っていうか、欲望って何よ! 欲望って!」
「穴が空くほど見つめてきておいて、今更とぼける気か?」
「…………。」

 はぁ? 自意識過剰かよテメー。ナルシストか? 一人でいる時ずっと鏡見つめてるタイプなのか?(と言いたいところだったけど、残念ながら何も言葉は出てこなかった。)
 これだからクロロって口を開くと可愛くないのよね。やたら人の痛いところばっかり突いてくるし。むしろ完膚なきまでに追い詰めてくるし。しかも、それでいてムカつく言い方するし。中身だけそっくり誰かと入れ替わってくれないかな。(それはそれは心の清くて美しい誰かと!)
 そしたら、きっとあたしは“クロロのこと”を好きになれると思うの。
 ……でも、こんなことで喧嘩するのもイヤだし、今更とぼけるのも変だし、ちょっとくらいだったら付き合ってあげても良いけどね。(あぁ、なんていじらしくて、度量の広いあたし!)

今日の運勢は良好◎
170928