「……キミ、誰だい?」
「いや、こっちのセリフなんだけど。」

 バイト終わりにアジトに戻って来て、密かに育てているパンジーの水やりをしようとしていたとき(そのパンジーには“クロロちゃん”と名前をつけてとても慈しんでいる、のはみんなには内緒の話だ。)、見慣れない一人の男が瓦礫の山の上に鎮座していた。
 あまりセンス良しとは言えない奇妙な服装をしており、一人トランプをいじって遊んでいる。(察するところ友達がいないんだろう。)

 しかし、本当に誰なの?
 あたしがにわかに戸惑っていると、隣の部屋(というより壁の向こう側)にいたシャルから「戸愚呂、こっち。」と手招きをされた。え、なになにそんな意味深な。もしかしてあたしが認識してた以上に大ゴトかなんかなの?

「ど、どしたの。 っていうか、フーイズヒム?」
「あれは最近入団したヒソカ。団員ナンバーは4番。」
「あー、なるほどねー。 どうりで見慣れないと思ったよ。
 ……あっ! もしかして歓迎会はこれから開くの? サプライズで彼には隠しておくつもりだった? もしかしたらあたしの曖昧な態度で彼にバレちゃったかな?」

 そしたらゴメンネー。 と軽く言ったら、シャルは「歓迎会なんて今までやったことないだろ。」と額を手で抑えながら呆れたように呟いた。そうだ、いいツッコミだ。キミはなかなか見所があるぞ。
 シャルはため息混じりに言う。

「なんていうか、ヤツは得体が知れないっていうか。 信用置けないっていうか。 団長は『面白そうだから放っておけ。』って言うんだけど。
 でも、戸愚呂も下手に近付かないほうがいいかも。」
「ふーん、何しでかすか分からない危ないヤツってこと?」
「まぁ、そんなところかな。」

 シャルがここまで警戒するってことは、やっぱりそれなりのことをしたヤツなんだろう。
 旅団員の中でも最弱で(厳密に言うと団員ではない。)、しかもかなりのドジっ子属性持ち(ただ考えなしのマヌケなだけ。)のあたしと危険人物がぶつかったら……。
 行く末は身の破滅? ゲームオーバー? ふっかつのじゅもんが違います?
 あ、ヤバイ。想像してみたら結構怖いかも。

「でも、もし何かあったらシャルがあたしを守ってくれるでしょ?」
「無理。 オレって武闘派じゃないし。 いざって時は戸愚呂を盾にしてでも逃げるよ。」
「オイオイオイ、あたしのこの脂肪100%の肉体で防げるとでも?」

 シャルは臆面もなくこういうことをさらりと言ってのけるので、今流行りの草食系男子も真っ青だ。お前に男としてのプライドはないのかよ! と言いたいところだけど、あたしも大概人のことをアレコレ言えない失態をやらかしてるから大人しく口を噤んだ。いやー、プライドだけじゃ食っていかれない厳しい世界だから仕方ないネ。

 ……しかし考えてみるに、やはりここはあたしの出番が求められている場面なのでは? みんなの捨て石になるくらいの用意はあるぞ、こちとら。

「……分かった。 ちょっとヒソカのとこ行ってくるわ。」
「何を分かったって? 遠回しに余計なことすんなって意味だったんだけど。」
「大丈夫、大丈夫。 ここはビシッと決めとかないとさ。 こういうのって、始めに白黒付けとかないと後々響いてくるから。」
「いや、ちょっと待って。」
「もしあたしに何かあったら骨くらい拾っといてや。」

 そのくらいの気概はあるでしょう?
 シャルの制止も聞かずに、あたしはピッと二本指を背に向けるとずんずん敵地へと歩を進めた。
 シャル曰く、その時のあたしの後ろ姿は戦場に踏み込む兵士のように勇ましかったという。

 あたしはヒソカの目の前に移動すると、なるだけ大きく見えるよう仁王立ちを取った。ここは、そこはかとなく威厳を醸し出す感じで。

「あたしは団員ナンバーは所持してないけど、実質権力を牛耳ってる裏メンバーの戸愚呂。 こう見えてかなりの古株なんだから、あたしの言うことは絶対よ!」
「へぇ、そういうルールがあるんだ。 思ってたよりクモって面倒な組織なんだね。」
「そうだよ! だからね、あんまりナマ言うと火星に代わって折檻よ!」

 ええ、もちろん嘘です。 当たり前だけどそんなルールは存在致しません。 後でバレてクロロに怒られたらどうしよう。 ……まー、いっか。 お尻ペンペンくらいだったら甘んじて受けようぞ。でも優しくしてネ。

「ふぅん。 ところで一つ質問なんだけど、クモにおけるキミの存在意義って何だい?」
「……ハイ? そんざいいぎ? なにその難しそうなテーマ。」

 あたしの脳内サミットでは一斉に「?」で覆いつくされるような超難題だった。
 あら? あたしって、一体何のために生きてるんだっけ……。

「キミは甘く見積もっても、せいぜい3……。」
「えっ、なにその数字。 あたしの顔面偏差値? だとしたら、それはさすがにかなり辛口でないかい?」
「キミの戦闘力の高さ、ってところかな。 全くそそるものを感じないからさ。
 何か特別な能力でもあるのかと思って。」

 戦闘力? なに言ってんだコイツ。 スカウターでも所持してんのか。 ベジータ並みの脳筋かよ。 強ければニートでも構わない戦法? アイツはブルマの稼ぎで食っていけてることにまるで気付いてねえんだ。バカ丸出しだよ。
 ……いや、話逸れたけど待てよ。ってことはあれか?

 あたしはラディッツに殺された戦闘力5の麦わら帽子がよく似合ってたオッサンにも劣るってか?
 もしもあたしがドラゴンボールに出張したら瞬殺レベルってこと?
 栽培マンにもおよそ勝てねえよ。 序盤のヤジロベーあたりでもタイマン張ったらかなりキツイぞこりゃ。

「栽培マン相手だったらボクも結構ヤバいかな。」
「あ、そうすか。」

 意外とノリいいんすね。

 それからヒソカと格闘すること数時間の時が過ぎ……
 あたしはすっかりヒソカと意気投合していた。

「へぇ〜、ヒソカもあのお菓子好きだったんだ〜。 あたしあれ初めて食べたときは大感激だったよ。 世界にはこんなものがあるんだ!って。」
「今思い返すとあんまり美味しくはなかったけどね。 でも思い出は美化するっていうし。」
「あー、分かる分かるー。 妙な懐かしさに駆られるんだよね〜。 あ〜、話してたらまた食べたくなってきた〜。 今でも売ってるのかなー?」
「販売店舗は激減したけど、今でも売ってるところはあるよ。 近場で住所教えようか?」
「えっ、マジで!? サンキュー、ヒーさん! 恩にきるよ!」

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「でね、お店の場所教えてもらったから今度シャルも一緒に行こうよ! 懐かしいでしょ? シャルもまた食べたいでしょ?」
「……ごめん、戸愚呂。 熱く語ってるところ悪いんだけど、その話題すごくどうでもいいや。」

 シャルは尚更頭をかかえてしまった。でも、そんなことはあたしの知ったこっちゃあない。
 だって今が楽しければいいじゃん。もっと刹那的に生きようぜ!

▽ ぱらぱぱっぱっぱっー
▽ 戸愚呂は修羅場をくぐり抜けた!
▽ 何故か戸愚呂はヒソカと仲良しになった!

170916