◇ 特別出演:「いつか王子様が」ヒロイン(らしき人物)
ダンスホールへ移動すると、あたしはたちまち狼狽した。声を殺して、前方を行くシャルを必死に引き止める。
「ちょ、シャル、ちょっと待って!
もしかして、クロロの彼女がいるかも……!」
「えっ!? 嘘、どれ?」
「3時の方向。 サファイアブルーのカクテルドレス着てる。 どこぞの富豪と喋ってるっぽい。」
なんという、最悪の事態であろうか! まさか、こんな船上で我が宿敵(?)に鉢合わせようとは。(気を抜かずに、もっとおめかししてくるべきであった……!)
再度視線を向ける。どことなく目を引かれる、ワガママでナマイキそうな面構えの女。
“そっくりさん”がこの世に存在しなければ、恐らく“彼女”その人だろう。(つーか、何の因果なの? こんなところで出会いたくなかったんだけど。)
そして、何となく嫌な予感がしたのだが、その予感は見事的中してしまった。
「……え! めちゃくちゃ美人じゃん!」
シャルは驚きを隠せないように言った。
「戸愚呂と違ってドレスに着られてるっていうより、着こなしてる感じするし。
……っていうか、スタイル良すぎ!」
あぁ……シャルナーク、お前もか。
女に惑わされるなんて、情けないことこの上ない。あの女は死神のごとく悪夢を見せる……そう、恐怖の象徴サタンのような存在なのだから。お前みたいなヤツは一発K.Oさせられるぞ……! 気をつけろ……!
シャルはあたしの心配をよそに、「一発お願いしたいぐらい」「でも団長と兄弟になるなんて最悪だしな〜」だとか何とか言っている。いやいや、最悪なのはお前の思考回路のほうだろ。いっそ下半身もがれて死んでこいよ。
そして、なんということでしょう!
シャルは可哀想なものでも見るような顔付きで、あたしの身体にチラと視線を落としたではないか!
て……テメー、この世で最も愚かな行為をあっさりやりやがったな! さりげなく比較してんじゃねえ! ブッ殺すぞ!
こちとら劇的ビフォーアフターじゃねえんだ! 匠が余計なことしてこうなったわけじゃねえんだぞ! 生まれつきこうなんだぞ! 悪かったな!
正確には彼女じゃなくて、“クロロの片想いっぽい”って情報は、ムカつくからシャルには絶対に教えてやらない!
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