ある物語には、ネクロフィリアの王子もいたらしい。時に哀れな性的嗜好は悲劇を招く。だって、食べちゃいたいくらい可愛いって怖いじゃない。死体を愛でたって、腐りゆくだけじゃない。
「今度はオレの番だね。 君の名前は?」
「戸愚呂=ゾルディックよ。」
「戸愚呂か。よろしく。」
彼を試してやろうと思ったが、驚くほど微動だにしない。……ますます面白いわ。
これからどう料理してやろうか。スパイスには何を選ぶ? この男前の顔を歪めたらさぞかし小気味好いだろう。
「戸愚呂、もう一ついいかい?」
「何?」
クロロは形の良い瞳を細めて続けた。
「シロツメクサを手向けたのは、何故だ?」
火花の散ったような衝撃だった。
思いもよらない不意打ちに、あたしはすっかり言葉を失ってしまう。
彼は……クロロは、依然として作り物の笑顔を保ち続けている。しかし、その眼底は既にわらってはいなかった。
ここまで、全て完璧に計算されていた。有り得ないことに料理されていたのは間抜けな自分であり、いともたやすく確信犯の手によって捕らえられたのだ。
―― 確か花言葉は幸福、幸運、約束……そして復讐、だったか。 クロロは冷ややかにそう付け加えた。
「どうやって、知ったの。」
「たまたま現場を見ていたんだ。」
「……そんなわけないでしょう。 あなたがあの子達の親玉? わざわざ報復に来たってわけ?」
「嘘は言っていない。 オレは奴らに知恵を貸しただけだ。 報復など見当違いも甚だしいな。」
あの仕事の依頼は、街に巣食う悪辣な盗賊団を殲滅して欲しい、というものだった。慈善事業には一切興味はなかったが、内容に対して褒賞金は悪いものではなかったし、何より金はいくらあっても困らない。あたしは二つ返事で了承した。
しかし、いざ蓋を開けてみると、それは孤児で構成されたガラクタのような烏合の集だった。自分勝手な大人の都合で作られ捨てられ、殺されただけの。
「お前はあの時何を考え、何を思っていた?」
「そんなことを知ってどうするの。」
「言ったろう? 単なる興味だ。」
「じゃあ言わせてもらうけど、シロツメクサなんてそこらに生えてるただの雑草よ。 意味なんてないわ。」
「それは嘘だな。」
ぴしゃりと彼は断言した。
決して覗かれたくない、心の柔らかい部分をつつかれて名状しがたい殺意が湧いてくる。
「これ以上くだらないことを抜かすと今すぐ殺すわよ。」
「交渉決裂か。 ……面倒だが仕方がないな。
なら、せめて戦いやすい場所へ移動しよう。 ここは割と気に入っているんだ。」
クロロのそれは、人間味を感じさせない冷めた表情だった。その仮面をどう引き剥がしてやろう。粉々に千切ったって、きっとまだ足りないだろう。
しかしここにきて、あたしは重大なことを思い出していた。
ボロネーゼを食べ損ねたことだ。
ヒーローは殲滅された
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