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あれから随分と時間が経過して、以前よりオレの背は伸び始め、どうしてあんなに苦労していたんだと疑問視するくらい簡単に地走鳥に乗れるようになっていた。足の速さだって、もはや戸愚呂にも引けを取らないはずだ。(もっとも、わざわざそんな勝負はしないので勝敗は分からないのだけれど。)
このところ、戸愚呂とはまともに口もきいていない。オレにはパイロがいるし、戸愚呂は戸愚呂で女友達と遊んでいるしで関わりを持つこと自体が減っていたからだ。
だが時折、視線がかち合ってしまう瞬間があった。(そういう時は、決まってそわそわと予感がした。)目が合ってもお互いすぐに逸らしてしまうのでほんの一瞬の出来事に過ぎないのだが、魚の小骨が喉につかえたような、そんな奇妙な違和感が拭えなかった。何故だろう、落ち着かない。極力戸愚呂のことは考えたくないのに、自然とヤツが視界に入ってくる。
アイツ、オレのいないところではよく笑う。やっぱり、蜂蜜色だと思った。
―― そんな折のことだ。
「戸愚呂にも、シーラのことを話さない?」
この間遭遇した“シーラ”のことは、オレとパイロだけの秘密だった。だが、何を思ったのか唐突にパイロがそんな提案をし始めたのだ。一体何を企んでいるのか。
「……どうしてだよ?」
「だって、女同士でしか話せないこともあるかもしれないじゃない。」
「…………。」
確かにその可能性もなくはないだろうが、わざわざ七面倒な戸愚呂を召喚する必要があるのか?
アイツ、オレのことを目の敵にしてるんだ。嫌がらせの一つや二つくらいしてくるかもしれない。
「戸愚呂なら、きっと大人にも下手なことは言わないと思うよ? それに、困っている人を見捨てたりしないだろうしね。」
「…………。」
結局、パイロに押されるままオレは折れた。戸愚呂を認めたかったわけではない。
◇
戸愚呂はシーラに対して興味津々だ。シーラも、そんな戸愚呂のことを面白そうに見つめている。
「へぇ〜、外の世界の人なんだ。 怪我してるの?」
「うん。 でも、言葉が通じないから辞書を使ってコミュニケーションを取ってるところなんだ。」
言葉が通じたって、コミュニケーションが円滑に図れるとは限らない。まるで存在なんて見えていないかのように、戸愚呂はオレのことを頭から無視した。
……パイロとは普通に話すくせして。そんなあからさまな態度に、気分はみるみる下降線を辿っていく。
「きっと、ボク達には頼みづらいこととかも出てくると思うんだ。 戸愚呂にもサポートを頼みたいんだけど。」
「分かった。あたしで良ければ力になるよ。」
「そう言ってくれて助かるよ。 そうだ、シーラが面白い本をくれたんだ。 戸愚呂も一緒に読もうよ。」
「うん! 読みたい! ……えっと、“よろしく”は公用語で何て言うの? まずはシーラに挨拶しないと。」
楽しげに会話する二人を無言で見つめるオレに、シーラは視線で笑いかけてくる。くすくすと、どうやら小馬鹿にされているようだ。何となく彼女の言わんとすることが理解できたので、やはり言葉だけが全てではないということを思い知らされた。
誤解を招きたくはない。が、上手く説明出来そうにないため敢えて省かせて貰うが、別にそんなんじゃない。
170805