痛い、首筋がとても。

じくじくと鋭い痛みが与えられると共に、ゾクゾクとした高揚感にいざなわれる。ディエゴの舌使いは熱くて、非常に厭らしい。その度に血液が奪われていくのを私は感じた。

「ディエゴは、吸血鬼なの?そんなにされたら、私の血が無くなっちゃう」

「君にはどう見える?」

ディエゴは尚も私の傷口を舐めあげて、私の耳元で囁いてみせた。それだけでまたゾクリとした感覚が私を襲う。何に其処まで感じるのか、魅せられるのか、一生かかっても私には到底理解することは出来ないだろう。何故なら彼は人を蹴落として生きることしか出来ない最低な男であり、私はそれを重々承知しているからだ。それでも何故か私の中から彼を打ち消すことは出来ない。願っても、どうしても叶わないのである。

彼が恐竜化して私の喉元に噛み付いたなら、私の命はたちまち消えるのだろう。でも、それでも今は良いと思った。彼に血の一滴すらも捕食されるのであれば、構わないと思えた。身体に起こっている反応とは裏腹に、私の心の内はひどく穏やかだ。

きっと私はこの世に産まれ落ちた時から彼の為にしか生きられないように定められて生を受けたのだ。そう考えなければ、どうしても辻褄が合わなくなる。

「ディエゴは私を食べるの?」

「君がお望みならね」

「そうやって何でも判断を仰がないでよ、私も分からないのに」

「オレはある種、君を崇拝の対象としておいているんだ。勝手な判断で君を壊すことは出来ない」

「それは貴方の都合でしょう?私は、貴方をどうこうする権利も有してないのに」

「それなら、君はオレの物になってくれるのか?」

「そうしたら、私を食べる?」

「本当はいつも、君をどうにかしたくて堪らないんだ」

私が頷いたとき、彼は牙を剥くのだ。


捕食者の飢餓
130206