「三井もとうとう青春馬鹿の仲間入りかー。最近放課後も全くつるんでくれなくなったもんねー」
「おう、まーな。こうしてオマエと屋上でサボる理由も無くなるわけだ」
「え、何でよ」
「赤点取ると公式試合出られなくなるし、やっぱりオレ大学目指すことにした」
「はぁ!?」
こいつ、本気かよ。この短期間でどれだけ豹変したんだよ。あんなに授業だりーだりー言って散々サボってた癖に今更あたしを取り残して真面目に走るとか、本当に有り得ないんだけど。そもそも三井がサボり始めたからあたしもサボり始めたわけで、それまであたしは平穏な女子高生やってたつもりだったってのに全部三井に巻き込まれて狂わされて、これも大半はあたしの意思だったかもしれないけど、それは確かに認めざるを得ないけど、それでもやっぱりこの仕打ちって酷いと思う。
「…あ、はは。やっぱ三井には不良は似合わないしね。うん、それで正解だと思うよ」
今の今までの感情は全部丸飲みしてあたしの腹の内で消してやった。人の人生にとやかく言う資格はあたしにないし、三井にはバスケが悔しいくらい似合ってたから。
動揺がまだ消えなくて、気持ちを落ち着かせようと思い煙草を一本取り出すと、それも箱ごと三井に取り上げられた。
「は、え…え?何すんの」
「俺も真面目に戻るから、オマエもこういうのは止めろ」
「そ、そんなの…三井には関係ないじゃん。今更止めろとか言われても、そんなの無理だし」
「教室戻ってもオマエの姿がないのとか嫌だろ」
「…あ、そっか。三井あたしのこと置いてくのに罪悪感抱いてるんだ。でもホント、気にしなくて良いから。あたしは今まで通り上手くやってくし」
声は震えなかっただろうか。実を言うと先ほどから涙腺も結構危うくなっていて、決壊寸前というところまで来ている。ヘーキ、ヘーキ。あたしは平気だから。おまじないのように胸中で唱えても、効果は全く表れない。これも全部全部、三井のせいだ。
「オマエが戻んないと、オレの計画が潰れるから駄目だ」
「は?け、計画って何」
「だから、その…教室で一緒に勉強したりとか、弁当食ったりとか、そういうやつだよ」
「な、にそれ。意味分かんないよ」
「つまりだな、…フツーの高校生カップルらしいことをオマエとやりたいってことだよ」
「…カップル?」
カップルって何だっけ。どうしよう、頭が働かない。カップルって意味が本当にあたしの考えるカップルに当てはまるなら、きっと意味としてはアレってことなんだろうけど、でも三井はあたしと張り合うくらいの馬鹿だからちゃんと意味を理解してるのか分かんないし。ああ、カップルカップルカップル…。カップルって、何だっけ。
見ると三井の顔が真っ赤になってて、それだけであたしは全てを悟るに至ったのだ。
「オマエのこと好きだから、オレとお付き合いしませんか?」
青春馬鹿ひとり、ふたり