「沢北〜、最近女子にモテ始めて調子に乗ってるんだって?」
「うわっ、先輩!誰からそんな話聞いたんですか!」
「河田」
「(あーもー、あの人は…)」
「良かったじゃない、可愛い彼女出来そう?」
「いや、オレ…好きな人いますから!」
「うん、それも知ってる。河田から聞いた」
「えっ!?」

本当にこの子は、よくなついてくるし可愛くて良い子だと思う。バスケセンスも抜群で常に注目浴びちゃってたまに調子には乗るけど、でも決して憎めない存在で、きっと沢北の彼女になる子は幸せになれるだろう。

…本当は今すぐにでもこの年上の殻を脱ぎ捨てて沢北に好きだって伝えたい。でもそうはさせてくれないのが、年上のプライドの辛いところで。沢北の迷惑に成りうるような気持ちなら、いっそのこと吐き出さないで留めておくのが正しい方法だと悟ったあたしは、我慢することに決めたのだ。

「先輩聞いたんですか」
「うん」
「…オレの気持ち」
「うん」
「うわ、マジかよ…」

何でか知らないけど沢北は泣きそうになってて、子犬のように潤んだ瞳であたしを見つめた。そんなにあたしに知られたくなかったのか、ちょっと…いやかなりショックだ。やば、何かあたしも泣きそうになってきた。

でも突然沢北に両肩を掴まれて、彼の真剣な表情を見たら出かけた涙も一気に引っ込んだ。

「オレ、全然脈ないってこと分かってますけど…もっとバスケ上手くなって先輩に見合う男になれるよう頑張りますから。だから、それまで先輩の彼氏の枠空けといて下さい!好きですっ先輩!」

沢北はそう言いきると、今度は反対の方向に走り出した。いや、これは逃げ出したと言うべきなのか。

あたしの脳内がその言葉を噛み砕くのにえらく時間がかかって、沢北の背中を追い始めたのは数秒後の話だった。

「待って沢北!あたしも好きだよ!」

フライング・メドレー