幼馴染っつーのは自分ではどうしようもねェもんだよな。帰る方向がまるっきり一緒で、たまたま下駄箱で会っちまったから一緒に帰ってるってのもどうしようもないことだ。いつも連れだってる億泰がたまたまいなくて、二人っきりになっちまってるこの状況も、どうしようもない。母親同士が仲良しで、未だにコイツとの因縁が断ち切れないのもオレの意志とは関係ねェ。つまりオレは何も悪くない!グレート、これさえ分かりゃあそれで良い。

 隣でチンタラ歩くこの女は、先ほどオレが買い与えてやった肉まんにかぶりついている。幸せそうな、間抜けなツラしやがって……。今日は所持金千円もなかったっつゥのによ〜。
 つい、コイツの前で宝くじに当たったことを自慢げに語っちまったことが第一の敗因だったよなァ……。まァ、この仗助さんは穏便で優しいから百円かそこらの肉まんにいちいち目くじら立てたりはしねェけどよ。ウン、ウン。

「あ、そういえばこないだね。仗助の親戚の……承太郎さん?…に会ったの!」
「エッ…あ、会っちまったのか?承太郎さんに……」
「うん!噂通りかっこいいのねぇ。背がバスケットの選手並みに高くって、顔だって素敵だったし。あのルックスにケチつけるところなんてまず無いわよね」
「…そりゃァ、そうだろ。何てったって承太郎さんはオレの憧れの人だぜェ〜?」

 あぁ〜ッ、恐れていたことがついに起こっちまうなんて!オレとしたことが、どうしてもっと注意を向けてなかったんだ。最近は変なヤツに絡まれたりで、あんまりコイツに構う暇もなかったからな…。コイツなんて単純でミーハーなもんだから、承太郎さんみたいなシブい人にはコロッといっちまうぜ。
 ……いや、いや。そういうことじゃあねぇ。論点をすりかえちゃあいけないぜ。ナマエが承太郎さんに夢中になるのが問題じゃあねェんだ。承太郎さんは女が騒ぐとムカつくって人だからな。そっちが問題なんだ。オレの幼馴染が騒ぎ立てて迷惑かけたとあっちゃあ、オレの顔が立たねェーだろ?
 こうなったら、悪い芽は ――摘む、なんて甘っちょろいこと言ってたらダメだぜ―― 早めに叩き潰すッ!

「だがよ、残念だったなァナマエ。承太郎さんはああ見えて妻子持ちだぜ。オメーが今からどうにかしようと思ってどうにかなるおヒトじゃあねェんだよ」
「ハァ?なに言ってるの?そんなこと、誰も言ってないわよ。馬鹿ねぇ」

 素敵な人を素敵といって何が悪いの?そう言ってナマエは心底不服そうな顔をする。

「お、おう……オメーが分別をわきまえてるなら、それで良いんだけどよ」
「でも、そうね。結婚するなら露伴先生が良いかなァ」
「はっ、えッ…!?ろ、今…何つった?」
「だから、露伴先生が良いって言ったの。“結婚”するなら」
「ろは、露伴だってェ?オマエ、あんなヤツが良いのか?」
「だって、20歳であーんな豪邸に住んでるんだもの」

 マンガの先生って儲かるのねぇ。今度は、ウットリとした顔つきをした。……そんな、馬鹿言っちゃあいけねぇぜ。オメーは「愛」より「金」を取るっつーのかよ〜!
 こりゃァ、落ち込むぜ。いや、なに、この幼馴染がカワイソウだからそう思ったんだぜ。オレは何よりも優しいからな。あんな陰険なマンガ家が良いなんて言っちまう、こんな間抜けな幼馴染に情けをかけてやってるんだ。

「オ、オレだってよぉ…金ぐらい持ってるぜ」
「それは宝くじのお金でしょ?そういうのは悪銭っていうのよ。楽して手に入れたお金はすぐどっかいっちゃうんだから」
「うぐッ……」

 ぐうの音も出ねえ……。何でコイツは、ヒトの痛い所を突くのがこんなに上手いんだ?昔から全てを知られているからか?そしたら、オレに勝ち目なんてねェじゃねえか。
 オレも真面目にバイトでもやってみるか?しっかし、バイトぐらいの金で豪邸でも建てられたらわけもねぇことだよなァ……。はぁ、思わず溜め息が出る。

 今や小銭だらけになった財布が、やたらと重く感じた。


回りくどい近道
141103 こういう回りくどい話書くのがスキなんスよ……