「ジョルノ、私あなたに聞きたいことがあるの」
「何ですか」
「どうして、髪を染めてしまったの?あんなに綺麗な黒色だったのに」
私は一応ジョルノの友人という立ち位置にいる普通の女子学生だ。(ジョルノ曰く他の女子はきゃあきゃあうるさいから関わりたくない、それに比べて君は静かで真面目だ、と話していたしよく互いのお勧めの本を貸し借りしているため私の見解としてかろうじて友人という立ち位置には入っていると思っている。が、ジョルノもそう思ってくれているかは本当のところ定かではない)
「これは染めたんじゃなくて、自然にこうなったんですよ。僕にも理由は分からない」
「そうなの?不思議なこともあるのね。生まれつきだったものが突然変わってしまうなんて。こういうのを突然変異って言うのかしら」
「髪色なんてどうにでもなりますし、僕は特に気にはしてないですよ。生活に支障があるわけでもない」
「ふぅん。私だったら髪色が変わるなんてショッキングなこと絶対に慌てると思うのに、ジョルノは随分と落ち着いてるのね」
「そうですか?」
変な人。やっぱりジョルノってば、変な人だわ。そういえば、この間も確か「ギャングスターになるのが夢だ」って話をしていたんだったっけ。冗談なのか、本気なのか、ジョルノの言うことはイマイチよく分からない。けれど、ジョルノはこういった冗談はあまり言わない人だからもしかしたら本当のことなのかもしれない。私は今日のお昼を決めるのでさえまだ迷っているというのに、ジョルノはもう将来を見据えているのだろうか。
「ジョルノはギャングスターになったらどうするの?どんな極悪非道なことをするつもり?」
「僕がこないだ言ったこと、信じるんですか」
「どちらかと言うと信じないより、信じた方が面白いでしょ?」
リアリティのない話で私ではとてもじゃないが想像すら上手く出来ないけど、それでも何となくジョルノは全貌を捉えてもいるような気がした。
私の言葉を聞くと、ジョルノは静かに笑った。
「実にあなたらしい答えですね。なら、もしあなたがギャングスターになったらどうしますか」
「え、私?んーと、そうね…私だったら、町中の本を買い占めて本屋さんを困らせてやるわ!」
「それから?」
「それから!?…えーと、えっと……もう!こういう話は苦手なのにジョルノったら!」
ジョルノはクスクスと笑うと、一言すみませんと謝ってきた。彼はこうして私が困る姿を見るのがおかしくて堪らないんだろう。こうして、よく私をからかってくるのだ。
「僕は極悪非道のギャングスターになる予定みたいですから、あなたの平穏な生活を奪うことにします」
「私の?そんなの嫌よ、何するつもり?」
「晴れてギャングスターになったら、あなたを拐いに来ます」
「私を誘拐するの?身代金を払うお金は持ってないのに」
「あなたを拐ってでも、僕の隣に居て欲しいですから。あなたを愛しています」
彼は、艶やかな黒髪を持っていた。それは彼に日本人の血が流れているからだ。日本人はひどく生真面目で、愛の言葉一つ囁くのにも苦労する生き物だと聞いていたのに、それは真っ赤な嘘だったのだろうか。
ジョルノがひざまずいて私の手の甲に唇を落とすと、途端にくらくらと目眩がした。全身の血が逆流しているみたいに、身体が火照っている。
彼はとっくに決意をしていたのだ。今、目の前で揺れる黄金は彼の決意の表れだった。そうして、私は自分の運命付けられた未来を理解するのだった。
運命に讃歌を
130202