夜中に目が覚めた。

サイドテーブルに置いてあるスマートフォンで時間を見ると午前2時を過ぎた頃だった。

隣で眠っている彼を起こさないように、そっとベッドから出る。

椅子に掛けてあった彼のカーディガンを羽織って部屋を出た。
昼間は暖かくても、夜中と明け方は寒くなってきた季節。

彼は背丈もあり、体格もしっかりとしているためカーディガンも大きい。
身体に巻き付けるように着るとふわっと匂いが掠めて安心する。

毎朝、毎晩いつも感じている香りだけれど
不思議と抱きしめられているような心地だ。

月明かりでほんのり明るいリビングに入り、そこからキッチンへと向かい冷蔵庫を開けた。
昨日買ったばかりの牛乳を手に取るとひんやりとした。

ホーローミルクパンをキッチンボードから取り出し、牛乳を注ぐ。
蜂蜜を入れようか迷っていると寝室のドアが開く音がして、暫くすると足音と共に彼の姿があらわれた。

『どうしたんです?』

キッチンの電気が付き、少し掠れた声で彼が声をかけてきた。

『七海さ……建人さん』

言い直してからミルクパンを見た。

『眠れないんですか?』

顔色を見るように屈んだ彼は、頬に手を当ててそのまま首元に手を添えた。
熱がないか心配になったのかもしれない。

『うん、目が覚めて眠れないからホットミルクを作ろうかなって』

『あぁ…それにしても暗闇で作るのは危ないでしょう』

『月明かりで手元は見えたよ』

やれやれといった感じに笑うと、自分が作るから座るように促したが
見ていたいと言ってそばにいた。

混ぜる彼の手元を見ながらすうっと大きく鼻から息を吸うと、ふんわりと甘い香りがする。

小さな気泡が浮いてきたところで止めて、二つのカップに注ぐ。

はちみつを小さじ一杯入れて、彼は冷蔵庫からバニラエッセンスを取り出し数滴加えた。

『良い香り』

『なかなか使用する機会がなかったから入れました』

彼を見上げた後にギュッと少し強めに抱きついた。
何も言わずに背中を包み込むように抱きしめてくれる。

『カーディガン借りちゃった』

『良いですよ。冷やさないようにしてください』

2人向かい合って座り、温かいホットミルクを飲む。

『そういえば、五条さんがホットミルクに醤油入れても美味しいって言ってたよ』

『あの人の言うことは話半分くらいが良いでしょう』

『みたらし団子みたいだって』

そう言って笑うと、彼も一緒にやわらかく笑った。

飲み終わりカップを洗って部屋の電気を切ると、先ほどより月の光が明るく感じた。

『もうすぐ満月だね』

『綺麗に見れると良いですね』

寝室へと戻りベッドの中へ入ると、何も言わずに彼は自分の胸の中へと引き寄せた。
この瞬間がたまらなく好きで、小さい頃を思い出す。

きっと、何歳になってもこうして抱きしめられて眠る瞬間は
子供の頃のような気持ちになるだろう。


『…おやすみ、建人さん』

『おやすみなさい』


明日の朝は美味しいコーヒーを淹れよう。



In Love Again