
「久しぶりですね」
ルナフレーナの柔らかい笑顔と声は昔から変わらない。
「お久しぶりです、ルナフレーナ様」
何年かぶりにテネブラエと訪れたが、あの頃と景色は同じ
懐かしい記憶の断片がまるでパズルのように合わさっていくのを感じる。
足元に感じる温もりに目を向けると
ふさふさとした尻尾をやんわりと振りながらアンブラとプライナがそこに居た。
二匹をそれぞれ撫でると満足したのか、ルナフレーナの元へと行きそこから庭へと駆けて行った。
「よく、庭で追いかけっこをしていましたね」
笑いながらルナフレーナは言い、部屋まで案内をしてくれた。
「兄ももうすぐ戻ってきます。久しぶりに会えることをとても楽しみにしていたんですよ」
幼少期の数年間をここ、テネブラエで過ごし
ルナフレーナとレイヴスと共に森の中へと出かけて草花を摘んだり
果物を採ったりして遊んでいた日々が蘇った。
なかなか眠れない時にはゲンティアナが神々の話を読み聞かせてくれた。
両親が恋しくて泣いていた時はレイヴスがずっと側に居てくれたことも覚えている。
「お茶の用意をしますね、チョコレートケーキも焼いたので頂きましょう」
部屋に着くとルナフレーナはそう言い準備へと向かい、一人残された部屋の中を見渡し懐かしさをかみしめた。
大きな窓辺からは気持ちいい日差しが入り、生い茂った木々が揺れる影がちらちらと揺れた。
暫くすると数人の話し声と共にドアが開きマリアが茶器を乗せたワゴンとルナフレーナが手製のケーキを銀製のトレーに乗せて持って来た。
「久しぶりだな」
二人の後ろから、美しい刺繍が施された正装に身を包んだレイヴスがゆっくりと歩みを進めてきた。
椅子から立ち上がり静かに頭を下げる。
「・・・お久しぶりです、レイヴス様」
顔を上げると目を細め懐かしむように笑顔を浮かべていた。
身体つきも顔つきもあの頃よりもさらに凛々しい出で立ちとなっているが
美しいオッドアイの瞳は変わらずにまるで宝石の様で、思わず見入ってしまった。
「お兄様、ウルワートベリーを持ってきてくださったのですね」
「あぁ」
瑞々しさで一杯の大小様々なベリーを乗せたトレーをレイヴスはテーブルへと置いた。
「苺が・・・たくさん」
ベリーに混ざって赤く艶めく苺も見え隠れしている。
「好きだっただろう?」
そう言って真っ直ぐに見つめるレイヴスの瞳を見ていると
一緒に森へと行って苺を取ってくれたことを思い出した。
「はい、苺はずっと大好きです」
マリアがカップへと紅茶を注ぐ音が静かに響く。
「生クリームと一緒にベリーと苺も添えましょう!」
楽しそうにしているルナフレーナにつられて緊張がほぐれ笑顔になる。
「・・・おかえり」
マリアとルナフレーナに聞こえないようにそっと、レイヴスが言った。
ー未来を夢見て苺をあなたにー
苺:幸福な家庭