本日8月30日と、明日は王都城で納涼祭がある。
ノクティスの誕生日でもある本日は、城内で働く者達とその家族、一部の報道関係者のみ
そして明日は招待客も来城する予定となっている。
シギルは夏季の選択講習があり学校へと来ていて、ノクトプロンプトは補習を受けていた。
今日の納涼祭にはプロンプトも勿論呼ばれているので、すぐに家へと帰って準備してくる!と気合を入れていた。
―♪
≪シギル、お城だからスーツ!?≫
≪いやいや!笑カジュアル過ぎなきゃ大丈夫だと思うよ、黒のパンツにTシャツでも≫
≪悩むなぁ〜≫
≪プロンプトは服のコーディネートのセンス良いし大丈夫!≫
≪ありがと!とりあえず、あとでね〜!≫
メッセージのやり取りを終えて帰ろうと廊下を歩きだした。
さっきまで誰かが居たのか、開けっ放しの音楽室が目に入り中へと入った。
窓が開け放たれて、カーテンが風に靡き外で部活動をしている生徒たちの声が響く。
久しぶりにピアノを弾こうと鍵盤に触れた。
昔、両親についてあちこち行っていた頃。
テネブラエも訪れてその時にルナフレーナとピアノの連弾をしたのを思い出した。
その時再びスマートフォンが鳴り、送り主はノクトだった。
≪もう帰った?≫
≪まだいる!音楽室〜≫
≪りょーかい。そっち行くわ≫
暫くするとノクトが入ってきた。
「お疲れ様、ノクト」
「お〜。さすがに寝れなかったわ..」
「そりゃあ補習ですから厳しめでしょう」
鞄を机に置き、ノクトは開いてる窓の方へと背中をもたれ掛けシギルのピアノを聴いていた。
「あ」
思いついてシギルはハッピーバースデーの伴奏を弾いた。
「ノクト誕生日おめでとう」
「サンキューな」
少し照れながらも礼を言い、ノクトは窓の外へと目を向けた。
心地よい風が吹きノクトの髪をサラサラと撫でていく。
「ね、ノクトもまだ指覚えてる?」
「んー?どうだろな」
「何か弾いて!」
「急だな...」
そう言いつつも席を交代し、ノクトはスラスラと曲を弾きだした。
「さっすが王子!」
「意外と覚えてるもんだな」
ルナフレーナが弾いて聴かせてくれた曲だった。
「懐かしい、テネブラエに行ったときルナフレーナ様が弾いて聴かせてくれたよ」
「あぁ、一緒に練習したな」
―思い出の曲なのです。
少し伏し目がちに照れながらそう言っていたルナフレーナの姿をシギルは懐かしく思った。
「ねぇ、ノクト小さい頃にさ」
「おー」
鍵盤の上を滑らかに行き交うノクトの指を見ながらシギルは聞いた。
「どうして人は死ぬの?って聞いてたの覚えてる?」
それは幼い頃のふとした瞬間だった。
世話係の乳母も、イグニスも答えに困っていたと思う。
「あぁ...」
そういえば、と言うようにノクトは小さく笑いを零した。
「イグニスを困らせたよな」
「大人も困ってたけどね。ノクト突然哲学めいたこと言うんだもん」
記憶がまだ曖昧な頃に母がこの世を去ってしまい、寂しさからそう聞いたのか。
何故いずれ人はこの世を去るのに、生きるのか。
幼いながらに答えを知りたかったのだろう。
「今でも考える?」
ノクトはピアノ演奏を止め二人の間に沈黙が流れた。
「どうだろな。最近は考えてなかったかもな―」
「そっか」
シギルは窓の方へと身体を向けて、グラウンドを見た。
陸上部とサッカー部が忙しなく動きひっきりなしに声も響いている。
「―イグニスの美味しいご飯を食べてさ、たまに小言を言われて」
突然何を言いだすのかとノクトはシギルの後姿を見た。
「グラディオに抜き打ちの稽古されて、ちょっと絞られて、プロンプトと寄り道してゲームして...そういうのを感じるために生きてるんじゃないかな。」
シギルは振り返り、微笑んだ。
「この世を去る時に、思い切り笑って“あー、よく生きた!”ってなるように」
ノクトは一瞬目を見開き、そしてプッと吹き出した。
「よく生きたって...シギルとは何もねーの?」
「私と?そうだなー。たまにピアノ弾いて、思い出話をして...ロイヤル悩みあるあるを話す」
「ふはっ...!ロイヤル悩みあるあるな!」
「貴重な幼馴染の存在ですからね!ちょっと期間空いてるけど...」
「これからもよろしく頼むわ」
シギルはスカートの裾を持ち、膝を軽く折りもう片方の手を胸に当てて頭を下げた。
「承知いたしました、陛下」
二人の笑い声が音楽室に響いた。
「んじゃ、準備しに一旦帰るか」
「そうだね...ってプロンプトからすんごい画像送られてきてるよコーディネートの...」
「....どれも同じじゃね?」
納涼祭まであと数時間。
きっと今夜は忘れられない夏の思い出の一つになる。
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