高校の入学式当日。
クリーニングしたての真新しいシャツの感触と匂い、履きなれない靴、初めて結ぶネクタイ。
鏡に映る自分の姿をカメラに収め少し早めに家を出た。
今日はきっと、今日こそは絶対声を掛ける―
そう心に誓い、通学路途中にあるショーウインドウ越しに映る自分を見て笑顔を作ってみた。
門をくぐると新入生達が自分の所属クラスの確認をしているので賑わっている。
自分のクラスを確認して向かう途中、懐かしい後姿を見つけた。
「あ...お〜い!シギル!」
呼ばれて自分の姿を見つけた途端、笑顔になる彼女に安心したのは自分の方だ。
「プロンプト!久しぶり、元気だった?」
シギルは小学校の頃一緒のクラスだった幼馴染のような存在で、ふとしたきっかけで話すようになりプロンプトが趣味としているカメラの事などをよく聞いて話しかけてきていた。
その頃は人と話すのが苦手で一人でいる事の方が多かったプロンプトにとって、唯一話す友人でもあった。
「うん、元気元気!シギルいつ帰国してきたの?」
「先週だよ、何だかバタバタで...って、プロンプトすっごい痩せたね!格好良くなってる!」
「へへ、そう?シギルも制服すっごい似合ってる!」
シギルの両親は王都城に勤めていて、主に外交関連の仕事をしている。中学の三年間は両親と共に海外へと行き、時折絵葉書を送って近況を報告してくれていた。
「両親も一緒に帰国してきたの?」
「うん、でもまたすぐに別な国へと行くから...私は叔父さん叔母さんの家に居るの。近くには姉夫婦もいるから許されたようなものだね」
「そっかぁ、忙しいんだね」
シギルの叔父叔母もまた、王都城内で勤務をしている。
多くは聞いたことはないが、兄姉もおりそれぞれ独立をしているようだった。
「あ、ちょっと職員室寄ってく。帰りお茶して帰ろうよ!久しぶりに一杯話したいし」
「オッケー!じゃあ、連絡するね」
シギルを見送り前に向き直ると
そこには少し気怠いような足取りで歩く男子学生の姿があった。
「あれが王子?」
「じゃない?同じ学校なんだ〜!」
「どうする?話しかけてみる?」
「え〜、待ってよ〜!」
“王子”と呼ばれる男子学生を遠巻きに見る女子生徒たちは俄かに感嘆の声を上げ、男子生徒たちは興味深そうに見ている。
プロンプトは深く深呼吸をした後走りだし、“王子”の背中を軽く叩き声を掛けた。
「こんにちは、ノクティス王子!初めまして、俺プロンプト!よろしくね」
突然声を掛けられ驚き、小さく声を上げたノクティスはプロンプトの頭からつま先まで見た後フッと笑いを零した。
「初めてじゃねぇよ」
「お..あははは!」
プロンプトは頭を掻きながら、初めてノクティスと会った時の事を思い出した。
小学生の頃ただ一度だけ友達になろうと声を掛けたことを、ノクティスは覚えていたのだ。
先程プロンプトがやったように、ノクティスも背中を軽く叩き二人そろって教室へと向かった。
*****
「てか、ノクティス王子俺の事覚えてたんだね」
「あぁ、すっげ痩せてビビったけど..つかノクトでいいよ」
「あ、そう?じゃあ改めて、よろしくノクト!」
そんなやり取りをしているとシギルが教室へと入ってきた。
「プロンプト!同じクラスだったんだね」
「うわ、マジか!ってシギル、ノクティス王子だよ...じゃなくて、ノクトだよ!」
そう言ってノクトを紹介すると、一瞬何かを思い出したような表情を浮かべたが笑顔で挨拶をした。
「シギル・ウィンクルムよ。初めまして、よろしくね」
ノクトの方も少し驚いた顔を浮かべシギルを見つめたが、プッと吹き出した。
「お前ら..二人揃って初めましてじゃねーし」
「あれ、覚えてたんだ?」
「え!?なになになに!二人とも既に知り合い?王都城内で出会ってた感じ!?」
ノクトとシギルのやり取りを見て、プロンプトは前のめり気味で驚いた。
「あぁ、子供の頃な」
「そうだったんだ〜...まぁ、シギルの両親も叔父さん叔母さんも王都城内勤務なら不思議でもないかぁ」
「じゃあ、そういうことで...改めてよろしくねお二人さん」
そう言って笑ったシギルにノクトとプロンプトもつられて笑った。
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