楽しかった夏休みが終わり、新学期も始まりいつも通りの日々となった。
夏が過ぎてから肌寒い秋を感じるまでそんなに時間はかからなかった。
いつものようにノクトのマンションにシギルとプロンプトは集い、イグニスとグラディオも警護終わりに立ち寄った。
食後それぞれの時間を過ごしている間、イグニスが食器を重ねる音がリビングに静かに響く。
その静かな空間を遮ったのは少し重そうな本がフローリングに落ちた音だった。
ノクト、プロンプト、グラディオは一斉にその方向へと目を向けたがイグニスは食器を洗い流す水の音で気づいていないようだった。
「珍しいね、シギル...」
ノクトとスマホゲームに夢中になっていたプロンプトは片手に持ったままポカンとした表情でその姿を見た。
「器用に寝るもんだな」
本を読んでいたグラディオは困ったような笑いを浮かべた。
少し大きめの一人掛けソファに両脚を抱え込むようにすっぽり収まってシギルは参考書を読んでいたが、いつの間にか眠ってしまい本が落ちたのだ。
その姿は何となく猫のようにも見える。
ノクトは立ち上がってすぐ側にあったブランケットを手に取りシギルへと掛けた。
「んー...ぅ..」
背もたれに顔を向けていたシギルは体勢を変えてノクトの方へと向き、首元に腕を絡めた。
「っと、シギル...寝惚けてるな..」
まるで子どもが甘えるような姿にノクトは困惑しつつ、やんわりと手を取ってブランケットの上に置いた。
「えーーーー!ちょっと可愛すぎなんですけど!俺にもやってくれるかな?」
「バカ言え、やめろよ...ノクト、客室空いてるんだろ?部屋に連れてくか」
「あー、そうだな」
ブランケットごとシギルを抱え込もうとしたノクトの後ろからイグニスが不意に声を掛けた。
「俺が運ぼう。ノクト部屋のドアを開けてくれ」
「おう」
イグニスは丸まったように眠っているシギルを抱きかかえ、客室用の部屋へと向かった。
「最近そんなに忙しいのか?学校は」
読んでいた本を置いてコーヒを一口飲みながらグラディオは聞いた。
「んー?いや、俺らは特にだけど...シギルは専門教科取ってるみたいで」
ガサゴソと自分のリュックから探し物をしながら答えたプロンプトは忙しなくリビングを出て行った。
◆
そっとベッドへとシギルを降ろし、イグニスは首元まで布団を掛けた。
「今夜はこのまま泊まらせていこう。シギルの家には俺が連絡をする」
「あぁ、いいぜ。明日どうせ休みだしな」
ベッドの淵に腰掛けイグニスは軽くシギルの髪を撫でた。
「...忙しくしてるんだな」
「ん?あぁ...色々頑張ってるみたいだぜ」
ドアに腕を組みながら寄り掛かっていたノクトはそう答えて二人の姿を見つめた。
そうか、と言いながら何となく嬉しそうな雰囲気でシギルの寝顔を見ているイグニスの姿は、王都城で一緒に昼寝をしていた頃とは違う感情が入っているんだろうと色恋沙汰にはさして興味がないノクトも察した。
そこへ静かにプロンプトがやってきて『しー』と唇に人差し指を立ててしゃがみながらカメラを構えた。
カシャ、という小さな音が響いたがイグニスには聞こえていないようだった。
「幸せそうだね」
「...あぁ」
小さくノクトにそう言いノクトも柔らかな笑みで答え、後からやって来たグラディオと共に三人で暫くイグニスとシギルを見守った。
もうすぐ、クリスマスシーズンの到来。
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