「お前達、揃っていたか」

ニックス、リベルト、クロウ、ルーチェの4人が休憩を終えて各自稽古へと向かおうとしたところにドラットー将軍がやって来た。

「少し、息抜きの勤務でもしないか?」

息抜きの勤務――どういう事だろうかと4人は顔を見合わせた。



「ちょっと、リベルト!そんなテキトーな飾りつけしないでよ、バラつき有りすぎでしょ」

王都城内の大広間に大きな天然のもみの木が運び込まれ、専用の高い梯子に跨りクロウは声を張り上げた。

「あぁん?どこがテキトーだよ、俺のセンスが溢れ出てるだろうよ!」

どうだ、と言わんばかりの得意げな顔で腕を組みリベルトは片眉を上げてクロウを見た。

「反対側もあんの、スッカスカじゃないのよ」

二人のやり取りにニックスは苦笑いを零しながら器用にリボンを巻きつけて行った。

ドラットー将軍が言っていた『息抜きの勤務』とは大広間のツリーの飾りつけだったのだ。

王都城正門前付近は専門のデコレーターを呼び飾り付けてもらい、廊下や各部屋は使用人たちが総出で飾りつけをする。

このメインともいえる大広間にはクリスマスには大勢が集まりパーティーをする予定で、セキュリティ面から特殊部隊でもあるニックスたちに頼まれた。

「ツリーの飾りつけをする【王の剣】なんてな」

ルーチェはそう言いながら丸いガラス製のオーナメントをニックスに投げて渡した。

「まぁ、たまには良いだろ。平和な証拠だ」

ニックスは繊細な模様が施されたオーナメントを見て、故郷で家族と過ごしたクリスマスを思い出した。


「叔母さん!」

「あぁ、シギル!悪いわね呼び出しちゃって。これを家に持って帰って欲しいの。今日はちょっと遅くなるわ」

王都城で働く叔父叔母夫婦の元へとやってきたシギルは荷物を受け取った。

インソムニアとオルティシエ他、各国を行き来している両親に変わって叔母達が保護者となってくれている。
少し変わっているかもしれないが、シギルの家は祖父母と叔父叔母夫婦もずっと一緒に住んでいた。
祖父母は既に他界しているが、双子の兄姉、両親が家を出た形なので広い屋敷に数人の使用人とシギル達が住んでいる。

「うん、お仕事お疲れ様!叔父さんは?」

「今会議に出てるのよ。ちょっと長引きそうでね...そうだ、城内がクリスマスの飾りつけ終わったのよ。見ながら帰るといいわ」

そう言って叔母は執務室へと戻って行った。

正門前はまだ飾り付けの途中だったが、城内はほぼ終わっていた。

階段の手摺の柵部分には大きなリースが飾られ、ポインセチアもあちこちに置かれている。
リースは天然の物なので通ると良い香りが鼻を掠めた。

玄関ホールにはゴールドを基調とした大きなリースが壁に飾られて、中央には同じくゴールドの飾りが施されたツリーがあった。
その足元に所狭しと美しいリボンや包装紙で巻かれたプレゼントが置かれていて
シギルはその雰囲気が大好きだった。

「わぁ....」

思わず声を上げて左右を見ながら城内を歩いた。

大広間の方へと来ると、部屋からは賑やかな声が聞こえそっと扉を開けてみた。



「おっと、これはこれは...」

梯子から下に降りてツリー全体の装飾のバランスを見ていたルーチェは、ドアを開けた主を見て少し大袈裟に感嘆の声を上げた。

「初めましてシギルお嬢様。【王の剣】、ルーチェ・ラザロと申します。以後お見知りおきを」

片手を胸に当て、軽く頭を斜めに下げルーチェは挨拶をした。

それに気づいたリベルト、クロウ、ニックスも集まってきた。

「ウィンクルム夫妻とこのお嬢さんね。昔に会った事あるけど...覚えてる?クロウよ。この間の海ではゆっくり話せなかったものね」

「リベルトだ。夫妻にはいつも世話になってるよ!」

二人と握手を交わし、ニックスの方を見た。

「ごめんなさい、作業中だったのに勝手に入って...」

「いや、良いんだ。もうすぐ終わる」

ニックスは手に持っていたトップに飾る星をシギルに見せた。

「仕上げをやるかい?」

「え!いいの?」

高さを見て遠慮する返答が返ってくるかと思いきや、予想に反して目をキラキラさせながらシギルは喜んだ。



「気を付けてねー」

「ニックス、お嬢ちゃんに何かあったらお前のボーナス飛ぶぞ」

「ボーナスで済めばいいが...」

言いたい放題の三人を梯子のてっぺんからやれやれ、といった具合に首を振りながら見下ろした。

スイスイと梯子を登りあっという間に同じ目線に辿りついたシギルを見て驚いた。

「逞しいな」

「昔テネブラエに行って、手摺に上って木の実を取ろうとしたら令嬢としてそれはどうかって注意された事もあったの」

ニックスは声を上げて笑った。

星を受け取りシギルはもみの木の一番上にそれをセットした。

「出来上がり!」

クロウはイルミネーションの電源を入れて、ルーチェは部屋の電気を消した。

「綺麗...ありがとう、ニックス」

「どういたしまして」

満面の笑みで礼を言うシギルはイルミネーションに照らされて輝いている。

「ニックスのボーナスがなくならないように気を付けて降りるね」

「頼むよ」

そう言われて思わずニックスは笑ってしまった。



In Love Again