ベルが鳴り玄関のドアが開く音と低く落ち着いた声がホールに響いた。
「夜分にすみません...」
「まぁまぁ、寒いでしょう。どうぞ中へ」
ウェヌスが玄関ホールへと向かうとそこに居たのはイグニスだった。
クリスマスは家族で過ごそうと休暇を使いオルティシエから夫婦でルシスへと来ていたところだ。
「あら、イグニス!どうしたの?こんな時間に」
時刻は22時半を過ぎていた。
「遅くにすみません、その...」
珍しく口籠るイグニスだったが、ウェヌスは手に持っている箱を見てすぐに分かった。
「どうした?あぁ、イグニスじゃないか」
ノヴムが寒いだろうから中へ入って温まるように言ったがイグニスは遠慮した。
「シギルへ持ってきてくれたのかしら?」
「はい、」
ウェヌスが笑顔でそう聞くと少し照れ臭そうにイグニスは頷いた。
「あの子ね、今日は珍しく早く寝ちゃって...」
連日忙しそうにしている姿をイグニスも見ていた。
「じゃあまた、日を改めます」
「一度寝るとなかなか起きないのよ...だから部屋に入っても大丈夫よ!」
「えっ」
にこにこと楽しそうに手を合わせてそう言うウェヌスに一瞬驚いたが、イグニスは促されるままシギルの部屋へと向かった。
「あまり若い二人をからかわないように...」
リビングへと戻りノヴムが苦笑いを零しながら言った。
「あら!いいじゃない、目が覚めたら愛しい人からのクリスマスプレゼントだなんて」
◆
シギルの部屋へ向かう途中、階段の壁には双子の兄姉との写真やノクティスとの写真、家族写真が飾られており懐かしさも込み上げた。
ドアの前に立ち何となく黙って入るのも...と思い、イグニスは小さくノックとした。
ウェヌスが言っていたように、ぐっすり眠っているのか返答はない。
真鍮のドアノブを回し入ると木製のドアが開くときの独特な音がした。
イグニスはそっと歩みを進めベッドサイドに持っていた箱を置いた。
よく眠っているシギルを見ると小さい頃と変わらず、身体は仰向けで首だけを右に向けて寝ていた。
オルティシエとテネブラエについての歴史を勉強していたのか、二冊の本が重ねて置いてあり
その奥には5人で撮った写真が飾られていた。
一つの窓だけレースのカーテンにされており、付けっぱなしのランプを消すと月明かりが部屋の中を照らした。
「メリークリスマス、シギル」
部屋を出る時にイグニスは小さく呟いた。
◆
「ねぇ...」
クリスマスが過ぎた数日後―
久しぶりにノクトのマンションに5人が揃った。
イグニスは夕飯の仕込みを始め、グラディオはソファで新しく買った本を読み、ノクトとプロンプトは絨毯の上に寝そべりクッションを胸下に敷いてスマホゲームに夢中になっていた。
シギルの深刻そうな呼び声に3人は一斉に顔を向けた。
「どうした?」
本を閉じたグラディオが心配そうに見つめる。
「私のところにも...サンタが来たんだよね」
「「はーーー?」」
「朝起きたら置いてあったの、こんなプレゼント両親も叔父さんも叔母さんも絶対選ばない!」
「中身なんだったの!?」
「センス悪いものだったのか?」
「ううん、名前が彫ってあるすごくオシャレなペン!シェルと銀で出来てるの!」
「お前軽く両親たちディスったな...?」
「いや、こういうオシャレな小物って発想がないの!」
シギル、ノクト、プロンプトの3人は話に盛り上がり騒いでいる。
グラディオは移動して、カウンターテーブルへとイグニスに向い合うように座った。
「...いつ種明かしするんだよ」
「ん?まぁ、そのうちな」
グラディオは笑って先ほどの続きを読み始めた。
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