4月○×日、銀魂高校の玄関先の掲示板に人が群がっていた。本日は今年度が始まって初の登校日。つまりクラス替えがあり、そのクラス割表を見るために全校生徒が群がっているのだ。
そこに1人の女子生徒が登校してきた。名は泉小町。つまりこの物語の主人公である。
皆が必死に自分の名前を探す中小町は1人落ち着いていた。
「(きっとZ組なんだろうなー。)」
そうZ組。銀魂高校Z組担任坂田銀八。何故かZ組は1年の時からクラスメイト、担任までもが2年間同じなのだ。流石に去年はクラスメイトが1人も変わらず、担任までもが同じなのは驚いたがきっと今年も同じなのだろうと、察していた小町は1人落ち着いてZ組の掲示板へ真っ直ぐ向かう。
「あった。」
小町の予想は的中しZ組の欄に“泉小町”と自分の名前がある事を確認し、一応クラスメイトと担任を確認する
「(やっぱり同じだ。)」
やはり、クラスメイトと担任も変わらずであった。
しかし小町は別にZ組が嫌と言うわけではなかった。むしろZ組の担任もクラスメイトも好きなので逆に嬉しかったりもするのだ。
小町は軽い足取りで記載されていたZ組の教室へ向かう。
Z組の教室に近づけば近づくほど廊下が騒がしくなる。
「(みんな元気だなー。)」
小町は春休みの間、両親のいる海外へ行っていたので仲の良い神楽や妙とは遊びに行く事もなく、春休みを終えたのでクラスメイトと会うのは久しぶりだった。始業式なので特に荷物はないが背中に背よっているリュックには海外のお土産が沢山入っていた。
「(喜んでくれるかな??)」
神楽は特に貰えるものなら何でも喜んでくれるタイプなので小町は喜ぶ神楽を想像し足を早めた。
3年Z組は校舎の割と奥にある教室だった。言わずもがなうるさいからであろうが、小町は教室のドアに手をかけ軽く左にスライドし、教室に入る。
「おはよー。」
小町が挨拶すると同時に
「小町ーーー!おはようアル!!!」
と神楽が思いっきり小町に飛びついた。その後から妙がニコニコ手を振りながらやってくる。
「久しぶりね。小町ちゃん」
「うん。妙ちゃんも神楽ちゃんも久しぶりー。」
神楽も妙も久しぶりに会う小町に待ってましたと言わんばかりにぐいぐいやってきた。
「小町ちゃん海外はどうだった?」
「楽しかったよ。春休みは宿題ないから結構満喫しちゃった。」
「小町のカバンの中からいい匂いするネ!!!」
神楽は小町に抱きついたまま声を張り上げる。小町も流石だな、匂いでわかるんだと何故か関心してしまった。
「実は海外のお土産買ってきたんだ。」
「うひょーーーーー!!流石小町ネ!!」
「あら、ほんとに?ありがとう。」
神楽は大袈裟なほど喜んでくれ、小町も気分が良かった。
「とりあえず、荷物広げたいから席についてもいい??」
「もちろんネ!」
小町は自分の席を確認しようと黒板に目をやると“席は自由席です”と気だるそうな字で書かれていた。
「(席自由なのかー、)」
担任、坂田銀八はめんどくさがりで1年間席替えをしない。この自由席でこの1年間が決まるのだ。
どこか空いてる席を探そうと教室の中心に目をやると
「小町の席はもちろん私の隣ネ!」
「もう、小町ちゃんの席はとってあるわよ。」
そう言いながら妙が指を指した方を見ると窓際の1番後ろの一番端に神楽のカバンが置いてありその前の席には妙の荷物がそして妙の斜め後ろつまり神楽の隣の席には妙の小さいポーチと神楽の筆箱が置いてあり、きっちりと場所取りされていた。
「(あの、特等席3つ取り押さえるなんて2人とも流石だな)」
と思いながら小町は神楽と妙にありがとうと微笑みながら一緒に席に向かう。
席につくとササッと神楽と妙は小町の席に置いてあった荷物を退ける。神楽と妙も自分の席に座り小町の方へ身体を傾ける。小町はお土産に買ったお菓子を机一面に広げた。
「わぁ!大量アル!!!!」
「どれがいいかわかんなくて沢山買っちゃった。好きなの食べてね。」
「ありがとうアル!」
「ありがとう小町ちゃん。」
と言いながら神楽と妙は小町が持ってきたお菓子を漁り始めた。
すると小町の前の席に誰かが腰掛けた。
「あれ?土方くんこの席なの?」
まさか自分の前の席が土方だとは思わなかった小町は思わず問いかけた。
「おう、まぁな、」
と売店から帰ってきたであろう土方は遠い目をしていた。すると土方の右隣から喚き声が聞こえる。
「何でトシがお妙さんの隣なんだーー!」
と泣きながら土方にしがみつく近藤がいた。近藤はどうやら土方の左隣の席のようだ。しかし小町も妙の隣は近藤がもぎ取ったのかと思っており勝手に自分の前の席は近藤なのではないだろうかと思っていたので土方が座った時は内心かなり驚いていた。
「最初は姉御の隣、ゴリラが座ってたネ。」
「でもゴリラの隣が嫌だったから土方さんに座ってもらったの。」
と近藤たちの方には見向きもせず神楽と妙が言う。
「(なるほど。)」
すると左隣に誰かが座る気配がし小町が振り向くと
「あ、総悟くん隣なんだ。」
土方達と共に売店に行き帰ってきたであろう沖田が腰掛けていた。沖田はチラッと小町の方を向き
「まぁ、」
と呟く、その姿は目線はキョロキョロと揺れていて中々目が合わない。しかし、小町は沖田とは何故か中々目が合わない事は1年生からのお約束だったので特に気に止めることも無かった。
「近藤さんたちの近くだもんねー。」
確かにこの席は沖田と仲の良い近藤ともよく言い合いはしているが仲の良い土方がいるので別に小町は不思議に思わなかった。
がしかし実際は小町が登校する前に神楽と妙が小町の席はここだと話していたのが耳に入っていた沖田。そして妙の隣に近藤が必死に座ろうとする所を妙がどつき回し土方を隣に座らせようとするのを近藤が更に止めに入りまたボロボロになって争っている間にしれっと小町の隣の席に荷物を置いた。それを見ていた神楽が「サドの分際で小町の隣席に座るんじゃないネ!!!!!!!」と怒鳴り散らしてきた神楽と争いやっと手に入れた席だったのだ。
しかし、小町はそんな事も知る由もないので
「まぁねィ。」
とすました答えしか言えないのであった。それを聞いていた神楽が
「ハッ!!」
と鼻で笑う。それを聞いた沖田が
「なんでィ!クソチャイナ!」
と喧嘩を買う。小町は「(あぁ、まただ。)」といつものパターンにどうしようかと思って助けを求め用と前方に目をやると前では妙と近藤が喧嘩...。いや、一方的に近藤がやられているのを見て、「(こっちもか...)」とこれもまた、いつもの光景で両隣りでは「ほんとにサドは意気地なしアルな!」「なんだともっぺん言ってみろィ!!」と騒いで挙句の果てには教室の後ろのスペースで殴りあっており、小町は困り果てていた。
ふと目線を上げると目の前の土方と目が合った。
「お互い大変だな、この1年間」
と言われもはや小町は頷く事しか出来なかった。
「土方くんもどう?春休み海外に行ってきて沢山お土産買ったから良かったら土方くんも、」
とお土産を進めてみる。
「おぉ、悪ぃな。」
と土方が机に目をやる。「買いすぎじゃねーか?」と言われたので「神楽ちゃんがいるから」と言うと納得したような顔をした。
いつの間にやら妙が戻ってきていて、近藤とはもう決着がついていて、いや、初めから勝敗はわかっていたが、とりあえずボコボコにやられ涙を流している近藤に
「近藤さんもお土産どうですか?」
と声をかける。
「小町ちゃん!キミだけだよ!こんな俺に優しくしてくれるの!!」
と更に泣き出したので「とりあえずお菓子食べて元気出してください!」と言う事しか小町は出来なかった。
「新ちゃんにもあげてもいいかしら?」
と妙が聞いてきたので「もちろん!」と答えると「新ちゃーん」と早速妙が前の方の席に座る新八に声をかける。そして、呼ばれた新八はすぐにこちらに向かう。
「どうしたんですか?姉上?」
と新八は妙に問いかける。そしてお土産の話を聞くと「ありがとうございます。」と丁寧に感謝を述べられ「いえいえ」と小町も答えた。
「新八くんは席前にしたんだね。」
「はい、目が悪いもんで」
と会話をしていると小町はふとまだ後ろで喧嘩をしている2人を思い出した。
「神楽ちゃん?お土産なくなっちゃうよ?」
と小町が言うと「それはダメネ!!」と勢いよく小町達の方にに飛びついてきた。中途半端に喧嘩も終わった沖田はまだその場で立ち尽くしボーっと小町の後ろ姿を見つめていた。すると小町が急に振り返ったので目が合ってしまい沖田はカァーっと顔に血が登っていくのがわかった。そんな沖田を見て周りの人間は「(わかりやすいな、)」と心の声で呟いた。沖田のこのわかりやすい恋心に気づいていないのは、その恋心を向けられている小町だけであった。
「総悟くんも良かったらお土産。」
と小町が笑顔で沖田にお土産を進めると沖田は凄い勢いで首を縦にふった。そんな沖田を見て「(何故気づかない!)」と全員が思ったのは言うまでもない。そして沖田は顔を真っ赤にしながら小町の隣に立つ。
「総悟くんはどんなお菓子が好き?」
と何も気づいていない小町が問いかける。
「小町ちゃんがくれる物なら何でも好きでさァ!!!!!」
と勢いよく答える沖田に小町は豆鉄砲を食らったようにビックリする。そんな小町を見て沖田はしまった!変な事を言った!と後悔したが、小町はすぐに笑顔になって
「なんか、そう言ってもらえると嬉しいな。」
と返した。そんな小町をみて天使だと沖田は思ったが口には出さなかった。
そして皆に小町がお菓子を配り終えた瞬間に教室のドアがガラッと開き銀八が入ってくる。
「お前らー席つけよー。」
とやる気のない声が教室に響く。そんな声を聞いて「(1年から変わらないから新学年感ないな、)」と小町は思ったがこの日常が好きなのでまた楽しい1年になりそうだな。とこれからの1年を楽しみに思うのだった。