あの後、結局、高杉くんに教室へ来ていただく事は出来ませんでした。今日は何がなんでも高杉くんと教室で一緒に授業を受けると心に誓ったのに…。今はただ、自分の無力さ肩を落とす事しか出来ません。
「よー。委員長ー。今帰りかー?」
「あ、銀八先生…」
「どしたー?元気ねぇじゃねーか。さては、またどっかの変態野郎に縦笛でも盗まれたか?お前それ入学して何本目だよ。先生もう着いていけねーよ」
「先生、その白衣のポケットからはみ出してるそれ、私の縦笛ですよね。白木って名前書いてありますよね。返してください」
「え?いや、おめ、これは…」
「教育委員会に言いつけますよ」
銀八先生がなぜ私の縦笛を持っていたのかはこの際もうどうでもいいです。きっと私がどこかへ落として、先生が拾ってくださったんでしょう。そういう事にしておきます。
「銀八先生」
「あ?なんだよ」
「私の、いえ…私たちのクラスは、いつか全員教室に揃う日は来るのでしょうか…?」
「…さぁ。どうだろうな」
「私…自分が情けないです…。他のクラスはみんな全員揃ってて、それが当たり前で、笑い合って助け合っているのに…。なのに、私のクラスは…いつも一人欠けていて…」
「高杉ねぇ…。ま、あいつ元々協調性ってもんが皆無だから。なのになんで女にはモテんだろうなコンチクショー」
高杉くんがモテているかモテていないかは知りませんが、先生が女性にモテない理由は何だか分かる気もしますが…。
「ま、お前がそんなに心配しなくても、いつか全員揃うだろーよ」
「いつか…本当にそうなるでしょうか…」
「俺はそう信じて疑った事は一度もねーよ。だからお前も、俺を信じろ。分かったか?」
そう言って、銀八先生は私の頭をぐしゃぐしゃにして撫でると、小脇にジャンプを挟んだまま私の横を通り過ぎ、行ってしまいました。さっきまで人の縦笛を盗もうとしていた人に俺を信じろと言われても無理な話のように思います。ですが、銀八先生にあの様に頭を撫でられると、何故か安心して信じてしまいます。銀八先生にはいつも、根拠のない謎の安心感があるのです。
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