第五話



2026/07/20
▶メインストーリー第一章 第五話
桜の欠片 112枚 OK

ヒーロー課との遭遇



◆桜雅街中央公園

 若芽は桜雅街中央公園へと辿り着いた。
 昼下がりの青い空の下、満開の桜が花びらを散らしながら美しく咲いている。
(やっぱり綺麗……だけど、この桜の木が悪さをしているのかな……)
 桜を見上げていた、そんなとき。穏やかな声をかけられる。振り向くと、紫髪の整った顔立ちをしたひとがいた。
(綺麗なひと……声は男性に思えたけど、所作と言葉は女性にも感じる……中性的って言えばいいのかな?)
「えっと……何かご用でしょうか?」
 彼(彼女?)はスーツを着ており、特殊なデザインが施されたバッジを付けていた。警察の人間だろうとは推測できたが、捜査一課のものとは違う。身長も高く、若芽と随分差があったが、柔らかい雰囲気だから、全然怖くはなかった。どこの課のひとだろうか? 聞いてみる前に、自分から名乗るのが礼儀だろう。
「わたしは捜査一課の四方田班にお世話になっている、暖地です。今はこの桜の近辺で起きた事件の調査をしています」
 彼(彼女?)はヒーロー課の者だと名乗った。羽佐間が言っていた、異能力や魔力、天使や悪魔絡みの事件を担当する部署だ。
「アタシは冴木歩。お世話になっている……ってことは、四方田班員という訳ではないの?」
「急な異動になったので、無所属なんです。今は四方田班長の下で動いている感じですね」
「あら、そうなの? 四方田さんにはよくお世話になっているから……。ふふ、仲良くしてちょうだいね!」
「はい、こちらこそ」
 手を差し出されたので握手をする。にこやかな冴木に、若芽も微笑み返した。

「そう言えば……冴木さんも、何か調査中でしたか?」
「……まさか警察のひとに遭遇するとは思わなくて油断しちゃったんだけどね」
 冴木は形のいい眉と、声を潜めた。
「今から話すこと、できれば内緒にしておいてくれない?」
 それでも話してくれる……ということは、若芽を信用してくれての事だろう。こくりと頷くと、冴木は話を続ける。
「今話題になっている、桜の神隠しって知っているかしら」
「桜の神隠し……? ごめんなさい、まだ桜雅街に引っ越してきたばかりで、知らないんです」
「『満月の夜に桜の木の下に行くと、神隠しに遭う』……桜雅街の都市伝説なのよ」
「……あ、それなら……雷蔵おじ……じゃなかった、四方田班長に聞いたことが」
「あらあら? アナタからも内緒のお話が聞けそうね?」
 ついうっかり、呼び名をいつもの通りにしてしまった。冴木が聞き逃す筈もなく、興味津々といった様子で大きな瞳を輝かせている。この瞳に見つめられてしまうと、何となく抗えない魅力を持っていた。秘密の情報という訳ではないし、四方田に世話になっているという冴木になら、話しても問題無いだろうと、若芽は切り出す。
「えっと……内緒にはしていないのですけど……四方田班長のお家に居候させてもらっています。遠い親戚でして……家族を亡くしたので、引き取ってもらったというか」
「まぁ……そうだったの。ごめんなさいね、不躾な事聞いちゃって」
「いえ、大丈夫です。それで、都市伝説がどうしたんですか?」
 申し訳無さそうにする冴木に、此方こそ申し訳なくなって、若芽は話題を元に戻した。

「嗚呼そうそう。今までは都市伝説だからって誰も気に留めてなかったんだけどね、最近何故か満月の夜に失踪者が続出しているの」
「昨夜もあったそうですね……写真家さんだったとか」
「そう。……失踪者には特徴があってね。写真家、画家、デザイナー、音楽家……どれもアーティストと呼ばれる存在だわ」
 そして彼らは誰もがその活動に上手くいっていなかったり、スランプが目立っていたのだという。失踪者の特徴があったとは知らなかった。それだけ失踪していて彼らに関連性があるなら、そこに動機がある気がしてならない。
 冴木は上品に顔をしかめた。
「上からはヒーロー課の捜査命令は下ってないわ、でも絶対なにかおかしいの」
「異能力や魔力の形跡が無いからですね?」
「そう。でも、現に一向に捜査は進展していない……、このままじゃ被害者は増える一方だわ」
 悔しそうに唇を噛んでいる。何も出来ない自分が歯がゆいといった様子だった。人の為に動ける、ヒーロー課のイメージに相応しいひとだと若芽は思う。

「暖地ちゃん、なにか情報がわかったら教えてくれる?」
「はい。こちらも少々手詰まり気味でして……異能力でも、天使や悪魔でもない、新たな力が働いているのかもしれない、とは見ているのですが……証拠がまだありません。もし何かあれば相談しますね」
 冴木は華やいだ笑顔を見せて「ありがとう!」と笑った。そして時計をちらりと見やる。

「随分話し込んじゃったわね。アタシはそろそろ戻るわ、それじゃあまた会いましょ」
「はい、お気をつけて!」
 冴木はウィンクをして手を振り去っていった。若芽も手を小さく振り返す。
(ヒーロー課の方にお知り合いが出来ちゃった。同じように、この事件がおかしいと感じているひとがいたんだ……きっと協力者は多い方が良い筈)

 今朝の夢を思い出す。誰かの呼び声。
(この桜に……囚われてしまったの? それとも、桜自身が助けを求めているのかな……?)

 若芽はもう一度桜を見上げた。
 なにも変わらない光景だが、やはり胸騒ぎを感じる。……と。
「……ひゃっ!?」
 強風が吹いた。思わず目を閉じてしまう。
 ざわざわとざわめく木々の音だけが聞こえて――そして静かになって行った。



◆奇妙な美術館

「……はぁ、びっくりした……え?」

 目を開けると、そこに見えたのは桜雅街中央公園の光景ではなかった。

(え……ここ、どこ!? 何だか、色んなものが歪んでる……不思議の国か、美術館?)

 いくつも飾られた絵画。
 その中からはいくつもの苦しみと悲しみの声が上げられていた――。





うわー!? 気になる展開!!
冴木さんに会えてHAPPYだったけど、冴木さーーーん!! 戻ってきて! 一緒にいて!!



▶好感度
🎲5+2=7up 冴木好感度13%

▶桜の欠片
🎲5+2=7枚 112→119枚




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