犬神冬一 第一話



2026.07.29
▶キャラクターストーリー 犬神冬一 第一話
好感度20% OK

◆桜雅街中

 若芽が街中を歩いているときだった。

(……ん? 子供が泣いてる? 何かあったかな……?)

 泣き声を辿って自然と目を向けると、ヒーロー課の支援班の一人、犬神と子供がいた。

「…………その、」
「うぅ、うぇえええ」
「……あー……」
「アイスぅううう」
「……」

(えぇと……お子さんの買ったアイスが、犬神さんにぶつかっちゃって、台無しになった現場、かな……?)

 犬神の服には、アイスがべっとりとついていた。子供はアイスが食べられなくなったこと、知らない人に迷惑をかけてしまったこと、色んなことでこんがらがって大泣きしている。対する犬神は、怒っているというよりは困っているように見えた。周囲の人々も気になっているようだが、犬神の強面の影響でそそくさと立ち去ってしまう。強面慣れしている若芽にとっては、そんなに恐れる事もないと思うのだが……助け船が必要そうだと、概ねそのような推理をした若芽は、犬神に声を掛けてみることにした。

「犬神さん、対応変わりましょうか?」
「暖地……、すまない。その……苦労をかける……」
「いいえ、これくらい。いつもお世話になっていますから。……お洋服、まずはこちらで拭いてください」

 犬神にタオルやティッシュを渡す。心配性な若芽は色々持ち合わせているのだ。犬神は申し訳無さそうに体を縮こませながら、アイスを拭き取り始める。元々体格がいいから、そんなに小さくは見えない筈なのだが……今は、若芽の背に隠れんばかりだ。若芽は泣きじゃくる子供に目線を合わせるようにしゃがみこんだ。

「ごめんね、びっくりしちゃったよね……ってあれ? あなたはこの前の……」
「……あ、たんてーの、おねえちゃん?」

 まだ桜雅街に来たばかりの頃。桜雅街中央公園のスポーツ施設で出会った女の子だった。若芽と顔見知りだった事で、少女は泣き止む。

「うん、お久しぶりだね。今日はお母さんは?」
「アイス、買ってもらって……嬉しくて走ってたら、また……」

 どうやら再びの迷子らしい。若芽は少女を安心させるように微笑む。

「そっか。お姉ちゃん、人探しは得意だからね。じゃあ、アイス屋さんにもう一回行ってみよっか。お母さんも探してるだろうし……アイスの代わりになるかは分からないけど、これあげるね」

 包みに入ったりんご飴を取り出すと、少女の顔が輝いた。

「ありがとー!」

 機嫌は随分良くなったようだ。これで一安心。
 洋服を拭き終えたらしい犬神も、念のため紹介しておく。

「あとこのお兄さんは、お姉ちゃんの知り合いだから、安心していいからね。優しいひとだから大丈夫。……でも一応、ごめんなさいしよっか」
「あぅ……お洋服、よごして、ごめんなさい……」
「あ、ああ……服なら、洗えば良いんだ。怪我は……?」
「へいき!」
「……そうか……良かった……」

 犬神が心底ほっとした様子で微笑んだ。

(……笑顔! 犬神さんも笑うことあるんだなぁ)

 その穏やかな笑みに、少女も漸く笑顔になった。

 三人でアイス屋に向かうと、案の定、後ろ姿だけ若芽に似ている女性が少女の名前を呼んでいた。

「おかーさん! たんてーのお姉ちゃんに、また会えたよ!」
「嗚呼っ、またお世話になるなんて……! あと何でりんご飴!?」
「えっと……アイスと交換してもらったんですよ」

 ちょっと無理やりな説得だったが、犬神の服を汚したとなれば、お母さんの血相が更に変わってしまうかもしれない。子供が迷子になるストレスを考えれば、それ以上の負担は避けたかった。

「そうでしたか……それでも、すみません」
「いえいえ。お母さんもりんご飴、いりますか?」
「えっ!?」

 それは辞退されてしまったが、少女と母親とは「またねー!」と笑顔で別れた。
 一部始終を遠くから見守っていた犬神が、親子の姿が見えなくなってから近づいてくる。

「悪いな……、よくあるんだ、ああいうことは。……恥ずかしながら、言葉が上手く出てこなくて……」
「びっくりしちゃいますもんね。お疲れ様でした。……すみません、勝手に犬神さんとのトラブルをなかった事にしてしまって……。お洋服のクリーニング代、わたしが出しましょうか?」
「いや、いい。むしろ、タオルは汚してしまった。……洗って返そう」
「それこそ良いですよ?」
「そう言う訳には。……おまえが居てくれて助かった、……礼を言う」
「どういたしまして。……多分、あの子には犬神さんの優しさは伝わったと思いますよ」
「……そう、だろうか」

 強面で大柄だから、見た目だけで怖がられる事が多いのだろう。祖父も父も強面で、想い人も強面である、強面好きな若芽にとっては、そこで損してしまうのは勿体ない事だと思った。話せば穏やかだし、よく話も聞いてくれるし、心優しいひとだ。若芽にとっては落ち着く相手だから、そういうすれ違いの橋渡しが出来るのであれば、喜んで手伝うつもりだった。

「暖地。……礼になるかわからないが、おまえもアイスを食うか?」
「えぇと、良いですか? 丁度食べたいなぁと思っていて……」
「俺も、アイスを買いにここに来たんだ」
「そうだったんですね!」
「……暖地がいてくれると、買いやすくて助かる……」
「あはは、分かりました。ご一緒します」

 若芽が小さく敬礼してみせると、犬神は少し微笑んで、アイスを奢ってくれた。初めてのアイス屋さんで食べるのは、まずバニラな若芽だ。
 犬神はチョコレートとストロベリーを頼んでいる。

(大柄だし……と思ったけど、お持ち帰り用にしているから、きっと……)

 野暮な推理は心の内に留めておいて。若芽は少しお行儀が悪いと思いながらも、早速アイスを一口食べてみる。

「……ん、美味しいです!」
「そうか。……良かった」

 今度、コンさんと買いに来れるといいな、なんて思った若芽なのであった。


▶桜の欠片
🎲4+2=6枚 196→202枚


犬神さんが二つ買ったのは多分、あの方の分かな!? と邪推しつつ……。
けいもく1日目で、ワカちゃんのことをお母さんと勘違いした女の子に再登場してもらいました。
子供相手にはきちんとお姉ちゃんができるワカちゃん。……なのは、PLが子供大好きだからですね……。
そして突然のりんご飴。余っちゃうと勿体ないので、1個減らしておきます(笑)
後日、洗われてきっちり畳まれたふかふかのハンドタオルを届けてもらえそうな気がしています。
そしてすぐコンワカをねじ込むPL。そろそろこちらのHPでも出したいところ……





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