志木川亮介 第一話



2026.08.01
▶キャラクターストーリー 志木川亮介 第一話
好感度22% OK

◆警視庁

「ようこそ、警視庁へ。案内を担当する津西だ、よろしくな」
「はーい、皆さんこんにちは! 今回案内するヒーロー課の冴木といいます、よろしくね」
 今日は社会見学で、小学生の子供たちが警視庁に来ていた。
 異能力・魔力専門学校らしく、ヒーロー課から『異能力や魔力を悪いことに使わないように』という注意喚起をするらしい。

(この前も、アリシュテルダルって所の方々の見学ツアーをやっていたし……結構多いのかな?)

 若芽は偶然通りがかった。キョロキョロと色んな場所を見ている子供、津西や冴木の説明に耳を傾け、熱心にメモを取っている子供、友達とずっと小声で話している子供……多種多様な反応を見せている子供たちを眺めていると微笑ましい。子供好きな若芽は思わず、後ろの方にくっついてしまった。

「皆の持っている異能力、魔力は誰かを助ける事も出来るが、逆に使い方を間違えば誰かを傷つけてしまうかもしれないんだ」
「皆はヒーローになりたいかしら?」
「なりたーい!」「ヒロインがいいー!」
「ふふ、そうね、ヒロインも良いわね。皆、誰かを助けることができる素敵な素質を持っているのよ。学校でよく学んで、力の使い方を身に付ければ、ヒーローにだって、他にもなりたいものにだって、何にでもなれるわ」

 主に津西が先導しつつ、異能力者である冴木が様々な事例を見せていく。津西の穏やかかつ分かりやすい説明と、冴木の華やかな話術によって、その内に子供たちは尊敬の眼差しに変わっていった。
 話が終わったあと、子供たちは警視庁の周囲を見回って行くことになったようだ。

(ふふ……良い子たちだな。このまま伸びやかに育って欲しい……あ)

 若芽は警視庁を珍しがる子供たちを横目に、あくびをして立っている志木川に気付いた。
 子供たちのいる前で、だらしない姿だが……逆に志木川がキッチリしている様子も、ちょっと想像できなかった。何となくいつも気怠そうな印象だ。もしかしたら、昨夜は徹夜での任務だった可能性もある。ヒーロー課は特に、時間を問わず呼び出しがかかる事も往々にしてあるらしいのだ。
 心配になった若芽は、こっそり志木川に近づく。

「志木川さん、お疲れ様です。……眠そうですけど、大丈夫です……?」
「ん、暖地か。いい昼寝日和って感じじゃねえ? 天気が……」
「確かに……そうですね。ポカポカですし、お昼寝したくなるかも……で、でも、子供たちに『悪いことしないようにね』って言っている手前、うたた寝はまずいかもですよ……!」
「あー、それな。後ろのほうにいるし、油断しちまった。気を付けるよ」
「眠気覚ましにコーヒーでも買ってきましょうか?」
「いや、いい。サンキュな、……ッ!」
「えっ、嗚呼……!?」

 若芽と志木川が小声でそんなやりとりしていた時だった。
 物凄いスピードで、前の方から暴走した車が突っ込んでくる!

(嗚呼、子供たちが……!!)

 若芽が恐怖で立ち竦んでいる間に、志木川は真っ先に前に出て車の前に立った。本来なら激突すれば、ただでは済まない。思わず若芽は祈るように叫んだ。

「志木川さん……!!」

「ふん!」

(す、すごい……! あのスピードの車を止めちゃった……!)

 物凄い音を立てながらも、志木川は身体一つで車を受け止めた。志木川の異能力は身体のパワーを極限まで上げることだ。先程まであくびをしていた人物とは思えない機敏さと、恐れを知らない度胸。若芽が同じ異能力を持っていたとて、こんな動きが果たして出来るだろうか。

「暖地! 運転手を見てくれ!」
「あっ、は、はい……!」
「どうだ?」
「えぇと……意識がありません! 呼吸はありますが……うぅ、お酒臭いです」
「こりゃ取り締まり対象だな」

 志木川はそう言ってため息をついた。若芽はあたふたしながら救急車を呼ぶ。程なく、運転手は病院へと運ばれていくことになった。

「ツインテおにいちゃん、すごーい!」「かっこいー!」「おれもヒーロー課にはいりたい!」

 後ろの方から、一部始終を見ていた子供たちの歓声が聞こえた。

「……やれやれ、無事だったか」
「志木川さんのお陰ですよ」
「……まーな」

 志木川は照れながら後ろ頭を掻いている。
 まさかさっき見えていないところであくびをしていたなんて、子供たちには信じられないだろう。

「眠気、吹き取んじゃいましたね」
「いや? 逆に疲れて眠くなったわ……」
「ふふ。もう少しで終わるみたいですから」
「んー。じゃあ、暖地。もうちょい話付き合って」
「了解です。……あ、ほら、子供たちからヒーローインタビュー受けましょう」
「えぇ〜?」

 志木川は特に、身体能力を上げる能力を持つ子供たちに、力の使い方のコツなどを聞かれていた。説明がややぶっきらぼうな志木川のサポートを、いつの間にか若芽が担う。

「おねーさんは、どんな力を持ってるの?」
「わたしは……無能力者なんだ。ヒーロー課じゃなくて、『探偵課』ってところなの」
「たんてー?」「推理するの?」「無能力だからヒーロー課じゃないの?」

 素直な疑問が、ほんの少しだけ突き刺さる。もしかしたら、そうなのだろう。若芽がそれこそ志木川みたいな異能力を持っていたら……。でも、先程、異能力を持っていても無理かもしれない、と思ったところだ。怖がりだし、ヒーロー課には元より向いていない気がした。
 ただ。力を持った子供たちが、無能力者を蔑むような事になってはならない。若芽は慎重に言葉を選びながら答える。

「そうだなぁ……無能力のひとでも、ヒーロー課にはなれるんだ。現にさっき説明してくれていた津西さんは、無能力の筈だし……それでも、支援班としてヒーロー課を支えてるんだよ」
「へー、あのおじさんもすごいんだ!」「でもおねーさんは?」「無能力で何ができるの?」
「え、えぇと……」

 無邪気な眼差しが、逆に痛い。きっと、責めている訳じゃない。元々力を持っている子供たちだから、持っていないひとが何が出来るのか、純粋に知りたいだけだ。でも、若芽は言い淀んでしまった。わたしには、何が出来るのだろう。
 そのとき、志木川がぽん、と若芽の肩を意外にも優しく叩いた。

「コイツも、色んな事件を解決してる。……力があるからって、偉い訳じゃねえ。個性の一つだ。それは忘れるなよ、坊主ども」

 志木川がそう言うと、子供たちは目をキラキラさせてかっこいー! とまた歓声をあげたのだった。
 そうして社会見学はなんとか終えることが出来たのだった。


「暖地。すまないな、巻き込んでしまって」
「いいフォローしてくれたわね、ありがとう」
「いいえ、気になって勝手についてっちゃっただけだったので……子供たちが無事で、楽しそうに帰ってくれて良かったです」

 津西と冴木にお礼を言われ、若芽は恐縮するが……別れ際、何度も大きく手を振る子供たちを思い出し、微笑んだ。

「暖地は子供の相手が上手だったな。今度は一緒にどうだ?」
「あら、いいわね! ヒーロー課と探偵課の合同で! 子供たちの将来への幅が広がるのはいいことだわ」
「宜しければ、ぜひ!」

 子供好きな若芽にとっては、渡りに船といった申し出だった。探偵課が何をしている部署であるか、は分かりやすく説明出来るようにならなければ、と思う。それと、無能力者であることにどこか引け目もあり、どうにか自信を持たないと……だったが。

「志木川さん」
「ん?」
「最後、わたしのこと褒めてくださってありがとうございます」
「え? 俺、何か言ったか?」
「……はい。わたしはわたしに出来ることを、頑張ってみます」
「よく分かんねえけど……ま、頑張れよ」

 志木川の飾らない自然な言葉だったからこそ、こんなにも嬉しいのだろうと思った。


▶桜の欠片
🎲1+2=3枚 233→236枚



今回も会話マシマシでお送りしてしまった。
志木川さん、あんまりお世辞とか忖度とかしなさそうな、ストレートな物言いをなさるかなって。
体格差ある組み合わせも癖なので、体格いい人とワカちゃんをいっぱい話させてしまうぜ……!
何となく、異能力持ちと無能力者の間に、溝が生まれてしまう場合もありそうだなと思って……異能力持ちが偉い〜だとか、逆に異能力持ちは異端だ〜みたいな感じとか。でも、ここに見学に来た子たちはきっとそうはならないでしょう!






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