2026.08.02
▶メインストーリー 第二章 第七話
桜の欠片 246枚 OK
心の叫び
◆警視庁廊下
夜、若芽が探偵課に戻ろうとしているときの出来事だった。
(あれ、雷蔵おじさんと……田知花さんの声がする?)
四方田班のオフィスを通りかかる際、扉が少し空いているのが見えた。そこから声が漏れ出し、中から田知花と四方田の会話が聞こえた。盗み聞きはいけないと思いつつも、つい立ち止まって耳をそばだててしまった。どうやら、ドッペルゲンガー事件について話しているようだ。
「……『寂しい』ねえ。それって、その影原ってヒトの声だけなんですかねえ。俺にはどうも、そうは思えないですけど」
「……どういうことだ?」
田知花の言葉に、四方田が疑問を投げかける。何となく、四方田にも田知花にも、いつもよりピリピリした雰囲気が漂っていて、若芽は緊張してきた。田知花はどうも四方田の事が好きではないらしい……きっと何か事情があるのだろうけれど。
「わざわざ境遇の似た人間に見せてるんだ。『おまえも寂しいって思ってるんだろ』……って、言いたかったんじゃないですかぁ?」
「俺が寂しそうに見えるってことかい、それも寂しいねえ」
(武器を突き付けてくるのは、そういうこと、なのかな……?)
田知花の推理も一理あるのかもしれない。対する四方田は飄々と躱していた……が。
「……寂しい人間を理解できるのは、寂しい人間だけだ」
「……」
「だからあんたは声をかけたんだろ、暖地に。自分が寂しいからってな」
(……!)
思わぬ場面で自分の名前が出てきて、息を呑む。まさかここにいるのがバレてしまっているのだろうか? 鋭い観察眼を持つ田知花であるから、有り得ない訳ではないだろうけれど、流石に死角だから偶然なのだろう。
(雷蔵おじさんと、わたしは確かに……)
家族を突然、喪った身だ。似ていると言えば似ている。
「……そう思うのは、おまえさんも今寂しいからか?」
四方田は肯定も否定もしなかった。静かな口調で、田知花に投げかける。田知花は盛大な溜息を吐いた。
(田知花さんも……誰か喪っている、のかな)
「…………ハァ、変な話すんじゃなかった。ちょっと外の空気吸ってくるんで」
(……はっ! まずい、バレちゃう……!)
部屋を出ようとする田知花に見つからないよう、どぎまぎしながら若芽は自分の部屋へと足早に戻った。
◆探偵課
田知花には見つかることなく、戻ってくることができた。
(雷蔵おじさん……)
相馬に渡されたファイルを取り出し、四方田のページを見る。
(奥さんは、夏南さん。お子さんは、昴さん……)
四方田の妻子は、『魔力による連続殺人事件』によって亡くなったと書かれている。
殺害犯は、悪魔に憑依されていた津西。
事件は、悪魔が起こしたものとして処理され、悪魔は既に逮捕されている。
(……どんなにか、辛かっただろう。雷蔵おじさんも……津西さんも)
二人はお互いを尊敬しあう上司と部下といった雰囲気だった。それなのに、被害者側と加害者側になることになってしまった。そんなことどちらも望んでいなかっただろうに。
よくよく読むと、続きがあった。
(その後にも、事件が起きてるんだ……)
四方田も悪魔に憑依され、津西への報復を企て事件を起こしていた。だが、こちらも悪魔が引き起こした事件であるとして処理されている。
(悪魔は多分、心の弱みに付け込むのが上手いんだろうな……じゃなきゃ、雷蔵おじさんが憑依されるとは思えないもの……)
真犯人が津西ではないとはいえ、津西の身体を借りて行われた犯行だ。津西が憑依されていなければ、津西が悪魔に抗えていれば、そんな考えても詮無い事が思い浮かんでしまうのも、無理はない気がした。
その報復も、失敗に終わっている。勿論、成功してしまえば、津西の命は無かっただろうし、四方田も一層傷つくことになっただろうから、失敗に終わって良かったとは思うのだが。
(雷蔵おじさんの気持ちは、きっと昇華しきれていないのかもしれない……本当の所は、聞いてみないと分からないけど)
少なくとも、あの時の様子がおかしかった四方田を思い出すに、ドッペルゲンガーの「寂しい」という言葉は、彼にとっては「自分の心の反映」に聞こえたのかもしれない。
(二人にとっては、過去を思い出さざるを得ない事件になっちゃってるな……)
若芽にとっては、どちらも優しくて頼りになる二人だ。どうか、傷つき過ぎる事のないように解決出来ればいいと願いながら、ファイルの二人の名前をそっとなぞった。
ふと、若芽は顔を上げる。
(……!)
そこには、昨日と同じように、若芽の前にドッペルゲンガーが立っていた。
▶桜の欠片
🎲3+2=5枚 246→251枚
四方田さんの件を先取りしちゃったぜ!! メインでちゃんと回収されたぜ!!
ほんとこの二人に何の罪もないのにどうして……;; しんどい関係性になっているんだけど、それはそれとして好きです……。
そしてきっとこれ読んでから四方田さんキャラスト第二話の流れだったね!? 先取(ry
実際に聞いてるから田知花さんだなって思い当たれるな。ちょっと修正しようか迷い中です……(笑)
先が気になり過ぎる〜!
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