素敵なラグジュアリーを纏った少佐がいきなり手を止めるものだから、いつもの流れを悟り態とらしく溜息を零し項垂れてみせた。ちっぽけな精一杯の反抗だ。クスリと笑いを漏らしたその美しい手が艶めかしく脊椎を撫で上げインターフェイスを擽った。その感覚に反射的に身体が震え先ほどのムードを思い起こす。期待を乗せた目で少佐を覗くと今度はフフ、とソプラノの声が漏れた。


「残念だけど、お仕事ね」
「まあたお預け?…こうゆうとこ、公僕って嫌だ」
「駄々はベッドの上だけにして。さ、行くぞ」
「りょうかぁい」


渋々とベッドから脚を降ろすと焦れた少佐が急かすように私の腕を引っ張り上げる。ムスっとした顔をしてみせても、もう少佐はわたしを見てはいなかった。それが嫌がる私のスイッチを入れるためなのか、それともただ単に仕事中は私という個人を見ていないのか、思い悩んだことはあるけれどほぼ百パーセント後者であることはわかっているのだ。






「最悪」
「あら、捨て猫みたいね」


ツーマンセルを組んだのがバトーだったのが運の尽きだ。頭から爪先まで、それに終わらず下着までびしょ濡れになった姿を見て少佐が笑った。あいつってば本当に乱暴者だ。というより態とだ、絶対。チョロチョロするな、見失う、なんて怒鳴りつけておいて寸分違わずわたしの方へサイボーグを投げてきやがった。


「散々な目にあった…もう二度とバトーとは組みたくない」
「それも聞き飽きたわよ」
『少佐ともちは直帰していいぞ』
『えっほんと?』
『お楽しみの邪魔をすると後が怖いからなあ』


イシカワさんなんで知ってるの?衝撃的な言葉にぼやくと少佐が私の肩に手を回した。まあ、いっか。思った以上に早く帰れそうで深く考えないようにしようとすると、東からキラリと一線の光が入った。もう朝陽が昇ってきましたけど。再びがくりと肩を落とした。少佐は気にしない様子で現場に着けてあった私の車の運転席へ当たり前のように乗り込みわたしを急かした。
 再びセーフに戻ると少佐は何も言わず浴室へと向かっていった。しかし私は濡れ鼠状態で、立ち止まるだけで玄関口に水溜りができる。なんでタオルとか乗せてなかったのかなあと思っても後の祭りだ。いや、バトーが悪い。じゃなくて、どうしようか。そう考えていると既に全てを脱ぎ終えた少佐が扉から顔を覗かせた。


「そのままでいいわ、早く温まったほうがいいでしょ」
「やだよ、池ができちゃう。ここで脱ぐから袋ちょうだ」


もう仕方ないや、とそのままの場所でインナーを上へ上げると行き成りの浮遊感に思わず声が漏れた。冷えた身体に僅かな温もりを感じる。「少佐?」声を掛けても返答はなく、タイルの上に降ろされた。すると子供の着脱を手伝うように私の衣類を脱がせ始めた。自分で脱げるのに、と少佐を見つめているとブラジャーまで外されてから、少佐がわたしのほうへと向いた。


「こうゆうのも好きでしょ?」



160318

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