ずっと昔の小さいころ、まだお箸も上手く持てなくて、泣き虫だったあの時。
よくあるアニメの魔法使いという存在に憧れていた。

高いヒールで背筋を伸ばしてフリルをたっぷりあしらった桃色の服で身を包み、自由に空を飛んでは悪い敵を仕留めて。そんな自分の姿を思い浮かべては、世界のために戦うヒーローヒロインに重ねた。
それが今や、この様だ。力を手に入れたばかりの頃は人の手の余る力を操ることに精一杯で、そして何度も自分の命が消えそうになる恐怖を味わった。それも数年耐えてしまえば、待っていたのは煌びやかな賞賛でも人々からの暖かい感謝でもなかった。

 何の変化もなく、ただ自分の命を繋ぐため戦うことだけの日常。
更に重ねていけば成長を失くし変わらず居ることに不審がられ、いよいよ人里に身をおくことも難しく、神隠しのように俗世から逃れた。そうしたって私を心配する人は、初めはちらほらと見られたが少しばかりの時が経てば何事もなかったようにみんな忘れていく。

この頃にはもう、戦うことに意味は見出せていなかった。


150712→170226
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