ビルド

葦原出雲
あしはら いずも

「ふー……戦兎のお人好し、もう病気みたいなものだよ。まさか脱獄犯を連れてくるなんて――ああ、ストップストップ。疑ってるわけじゃないよ、単細胞」
「化学反応式くらいなら覚えてるけど、天っ才物理学者サマが居るからさ、ここには。私は心理戦用だよ」
「記憶が無くても、記憶があっても。私は私なんでしょ、戦兎」
「何も出来なくて、何もわからなくて、わ、私、……私って、なに」

「当たり前でしょ。心理戦は私の領分――だけど、読み間違えた、その時は……宜しく戦兎、お兄ちゃん」

お相手:桐生戦兎
兎雲イメージソング:コスモノート(天月-あまつき-)

頭脳戦と心理戦に特化した、4月2日生まれの21歳。本作の主人公・桐生戦兎が物理統計学的な頭の良さを発揮するなら、出雲は心情と心理描写に基いた頭の良さを発揮する。記憶喪失になったところを『nascita』の石動惣一に拾われるが、家族という言葉に激しい痛みを伴うフラッシュバックを覚えたため、申し訳なさそうにしながらも、家族にはなれないと断った。とはいえお人好し石動惣一によって住む場所(『nascita』の地下)と働く場所(『nascita』)を提供して貰ったため、家族という名はついていないものの、過ごした時間の性質でいえばもはや家族である。記憶喪失とは言ってもそれまでの知識を無くしている訳ではなかった。戦兎が請求書を突き付けられていた横で優雅にココアを飲んでいたあたり、出雲はバイト代でちょくちょく返していた様子。またその際、「出雲は五年分きっちり返してくれてるぞ?」と言っていたことから、恐らく出雲が出雲として『nascita』に住み始めたのは五年前である可能性が高い。そうなれば当時の年齢は16歳である。誕生日は便宜上、石動惣一に拾われた日付。名前の由来はスカイウォールの惨劇が起こる前の地図に書かれていた出雲の地名から石動惣一がつけたと思われる。葦原は恐らく出雲が個人的に浮かんだもの。

作中、万丈龍我のことを何度も「単細胞」と呼んだり、氷室幻徳に暗い毒を吐いたり、出雲自身はそれなりに過激な性格である模様。本人によると、「心理学を修めた人間は稀に人間嫌いになる。私はその類」だとか。その後続いたセリフ(「私も含めてね」)から、人間嫌いの「人間」には自身も含まれていることが窺える。自分のことを愛想のない人間だと自称するが、信頼している人間の前ではそれなりに笑っていることに気付いていない。石動惣一と桐生戦兎は面白がって、石動美空は言うと笑ってくれなくなるかもと思って言っていないが、万丈龍我はそもそもその事実に気付いていないので、もしかしたら本人に言ってしまうかもしれない。
戦兎が心の中に抱く記憶が無いことからの不安や恐怖、孤独感については出雲自身が記憶喪失であるため良く理解しており、戦兎がそこまで強い人間ではないことも理解しているため、毒は吐くが自分を揺るがせてはならないと感じている。戦兎が揺れれば戦局が揺れる。だが、その感情に覚えがある(むしろ戦兎のように使命や根幹に抱く信条がない分戦兎より辛いかもしれない)出雲ならば、その戦兎をなんとか出来るかもしれない。その為に、誰が揺らいでも、自分は揺らいではならない。自己評価が異様に低く、心理戦的状況で大いに貢献しているにも関わらず、自分は何も出来ていないという感覚を常に抱いているゆえ、前線に立って戦っている戦兎の方が辛いだろうから、という感情がある。

心を開いた相手には笑顔を見せる反面、自己犠牲的な行動を起こすようになるのが難点。例を出せば(戦兎と美空の却下で実現はされなかったが)心理戦を持ちかけて自分が前線に立つ、並びに自分がファウストに忍び込み内部を探る、所謂スパイをするなど。その度に戦兎に叱られているし美空には罰としてベッドに連れていかれ一緒に寝ているが懲りていない。そもそも妹視して過保護気味な美空と共に寝られるのだから出雲にとっては罰にならない。ただ戦兎に叱られるのは心にクるらしい。



真実

本名は猿渡二瀬ふたせ。北都の大地主の末っ子長女で、作中グリスに変身する猿渡一海の8歳下の妹である。第22話にて、兄の口からその事実が語られた。五年前に行方不明になった妹を探していた、と。奇しくも猿渡二瀬の誕生日は石動惣一に拾われた日と一致している。この時、出雲=二瀬の年齢が発覚した。当時から心理学的なあれこれに傾倒していた挙句人見知りでコミュ障で、そのくせ甘えただったらしい。16歳当時でIQや教養値が高く、心理学者という職業で稼いでいけるだろうと言われていた。一海の口ぶりからはシスコンということが伺えるが、農家の息子でドルオタでシスコンって……おっと誰か来たようだ
このことを聞かされた当初に記憶は戻っていなかったが、それがどうしたと言わんばかりの兄による猛攻に屈した。「お兄ちゃんって呼んでみ、ん?」「……お、」「お?」「お、お……お兄、ちゃん」「〜〜〜っ」「み、美空!私下行ってるから!」「っておい、待てよ二瀬!」※まだ記憶は戻ってません
記憶が戻った後はやはり兄なのか、爆発しそうな二瀬を宥めたり、慰めたり、頭を撫でたりしている。この男、シスコンにつき。恐らくではあるが、猿渡一海という男が居なければ、二瀬は確実に考えすぎて爆発して闇堕ちしていた。ひとつの事件(別名:家出)で収まったというのは幸運だろう。頭脳戦の参謀までエボルトに取られては勝負にならない。

そして……

■第29・30話
第30話終盤にて、ついに記憶を取り戻した。物理学者としての戦兎と心理学者としての出雲(=二瀬)で顔を付き合わせて考察し、恐らくベルナージュの力に影響を受けたものだと考えられるという結果に至った。一海へのなんとなく遠慮した感覚は一切無くなっており、甘えと言うよりも強い毒を吐くようになった(「み〜たん……」「うざい きもい 美空に近付かないでお兄ちゃん」)。戦兎や一海から五年前に何があったのかを聞かれた際は、困った顔をしながら「後で話すよ」と言っている。

■第32・33話
ついに五年前の真実が、本人から語られる――。当時16歳だった二瀬は、その年齢でありながら、既に心理学の権化として名を馳せつつあった。エボルトに人間の感情は存在せず、それ故に心理学≒感情の権化という存在に気を引かれていたのも事実だったが、実のところ二瀬を恐れていたのはエボルトではなく、その協力者である葛城忍であった。心理戦で心理学者に勝てる訳がない。エボルトは感情論など分からなかったが、心理学者はそうではない。何故なら、心理学者は人間だから、である。人間である以上、多少の感情は必ず存在する。そう考えた葛城忍はエボルト(≒ファウスト)を唆し、学校帰りの二瀬を誘拐。東都へ連れて行き、実験体としてネビュラガスを吹き込み、その結果二瀬は記憶を失くした。あとは石動惣一の姿で二瀬を拾えば万事解決、葦原出雲の誕生である。この時は誰も触れなかったが、ネビュラガスを吹き込まれたにも関わらず仮面ライダーにもなれない、かといってスマッシュにもならなかったことで、恐らく当時の時点でハザードレベルは2.1以上である。

■第46・47・48話
「やっと探してた妹と会えたんだよ。もうちょっとこの世に未練とかないの?」「ああ」「ああ、じゃないんだけど。……お兄ちゃん」「ごめんな、二瀬」「ごめんでもない。覚悟なんて決めなくていい。家族として過ごせなかった五年間を、今から取り戻すんじゃないの」「――ごめんな」「っ、お兄ちゃん!」
パンドラタワーが出現した直後に交わしたこの会話を思い出した二瀬は、不安になって自身もパンドラタワーへ登る。もちろんいつもならやらないことだ。二瀬が、出雲が得意とするのは、いつだって頭脳戦だった。けれども、出現する雑魚スマッシュを素手で殴り足で蹴る。変身もせずアーマーも着ていないのに、それだけでスマッシュが消滅する。そこで二瀬は気付いた。ネビュラガスを浴びた当時のハザードレベルが2.1以上なら、恐らく五年経った今はそれ以上に成長している。兄の姿は既になく、ただ崩れ落ちている美空を一瞥し、兄の使っていたスマッシュドライバーを右手に持てば、二瀬の体にドライバーが融合する。所謂、「最終回まで見ないと分からない特異体質」。ネビュラガスを浴びたにも関わらず五年間放置、しかも一年という短期間でハザードレベルを上げれば、体の仕組みが変わってもおかしくはない。相も変わらずアーマーは身につけていないが、グリスの力をその身に宿し、二瀬は最終決戦の地へと足を進めた。しかし、二瀬はエボルトの強大な力を前に、為す術なく敗北してしまう。――だが。そこは頭脳戦、心理戦に秀でた参謀。無論、必勝法は戦兎に伝えてある。取り込まれた万丈にも、相手が分かる範囲で。この作戦を、勝利の法則へと昇華して欲しい。同志だった、大切だった、寄り添えるただ一人の存在だった、もしかしたら好きだったのかもしれない。佐藤太郎の身体に葛城巧の頭脳が入った桐生戦兎のことが、出雲は、二瀬はきっと。

新たな世界では

スカイウォールが誕生せず、誘拐もされなかった為、兄と仲睦まじく暮らしている。名前も猿渡二瀬のまま。兄・一海が一目惚れしたらしい美空にお詫びの菓子折りを持って行きつつ、自分も美空と仲良くなりたいという下心が丸見えである。この兄妹は全く……。
なお以前の世界での終焉に少なからず携わったことに加えてハザードレベルが7以上になったこともあり、ぼんやりとだが前の世界のことを覚えている。中途半端な記憶なため、戦兎や万丈から49話に渡る話を聴きながら、その記憶を取り戻していくであろう。


そして、恐らくは……
(戦兎が二瀬の手を取って薬指にキスをしている画像)